ヘミシンクとゆるゆる日記 レトリーバル現世編
2011-02-21 レトリーバル No.12
目が覚めたら、昼近くだった。
(…おしっこしたい。)
トイレに行く。
すると、鋭い痛みが走る。
便器の中には血が混じっている。
泣きながら、用を足す。
外に出て、泣き出す。
「イタイよう。イタイのイヤだよう。
お母さん、いないの?」
しばらく、泣き続けていると、父親が飛んでくる。
「どうした、しんじゅ☆♪、そうか、痛いか?
かわいそうに。医者には連れて行ってやれないからな。
お腹すいていないか?
パンあるぞ。」
痛いのをどうにかしてほしかったが、お腹もすいている。
手渡された、メロンパンをかじる。
ここ数日、母親が不在で、毎朝菓子パンが朝食だった。
「痛いなら、布団に入って寝ていろ。」
お腹が落ち着いて、ウン、と頷き、布団にもぐりこむ。
少しして、「お昼だぞ。」と起こされる。
木綿豆腐にしょうゆがたっぷりかかっている。
後は白いご飯のみ。
おいしくないが、毎食これを食べさせられる。
昨日のからし豆腐でないだけ、マシだと言い聞かせて、なれない箸で豆腐を崩す。
「お父さんは、忙しいから、もう寝ろ。」と言われ、また布団に潜り込む。
しかし、寝すぎて眠れない。
お母さんに会いたいが、泣いても来てくれない。
お父さんは怖かったが、頼れる大人はお父さんだけ。
しかたなく、お父さんの側にいく。
「しんじゅ、このお菓子、好きだよな。
今日は三つとも全部お前が食べていいよ。
いつもは兄弟で一個ずつだもんな。
特別だ。
そのかわり、昨日の事を人に話したら、お前を捨てに行かなきゃならない。
おまえはいい子だから、大人に話したりしないよな?
そうでないと、痛くて、怖い目にあうぞ。
お前は出来の悪い、捨て子だったのを優しいお父さんとお母さんが拾ってきたんだ。
お前は本当はこの家の子じゃない。
もともと、いらない子だったんだから。
だから、お前だけ、不細工で頭が悪い。
いいか、この家にいたかったら、言う事を聞くんだぞ。
いいな。」
「うん。」
父親の膝の上に抱かれながら、
こくんと頷き、お菓子を受け取る。
頭がくらくらする。
(また、イタイのイヤだ。)
頭がしびれる。
(お母さん、本当のお母さんじゃないの?
お願い、早く、帰ってきて…。)
翌日、家族全員慌しく、産院に駆けつける。
弟が生まれたのだ。
お母さんは、疲れて、ぐったりしている。
「お母さん、あのね、あのね!」
「お母さんは疲れているから、また今度ね。いい子にしてるのよ。」
結局、また引き離される。
しばらくして、赤子を連れた母が帰宅してきた。
あれから、10日程たっていた。
(どうしよう。お父さんは大人に話しちゃいけない、と言っていたけど。
お母さんならいいよね?)
「お母さん、あのね、しんじゅ☆♪ね、お父さんにひどい事されたの。
夜寝てたらね、ポンポン、イタイ事されたの。
しんじゅ☆♪泣いちゃったの。
お母さん、助けてって、言ったのに。」
母親は、赤子の世話で忙しかったのだろう。
それにこの幼子の説明では事実を把握する事は到底無理な相談だった。
「そう。痛かったの。
お父さんに叱られたのね。
それは、しんじゅ☆♪がワガママ言ったからでしょう?
お父さんを困らせちゃダメよ。
しんじゅ☆♪は悪い子ね。
お母さん、忙しいから、また今度ね。」
少女は絶望する。
(あんなにイタかったのに…。
あれは、しんじゅ☆♪が悪い子だから、しかたない事だったんだ…。)
少女は絶望的に思い違いをしてしまう。
勇気を振り絞って訴えたのに、まるで理解してもらえない脱力感。
そして、頼りの母親に否定されてしまった悲しみ。
(本当は私はこの家の子じゃないんだ…。
だから、ひどい事をされてもしかたがないんだ。)
こうして、幼い私は最愛の母親の何気ない言葉によって、自尊心を粉々に打ち砕かれてしまう。
そうして、忌まわしい記憶を封印したのだった…。
ヒデー親父だな。こりゃ。
医者に連れて行ってやれよ。
気分悪くなるような記事を読ませちゃって、ごめん。
さて、私が体験したこの話。
「魂の殺人」という児童虐待の本に、良く似た話が記載されています。
保護者の立場をかさに来て、児童の心理操作を行っているわけです。
劣悪、非道の唾棄すべき所業です。
読者の皆さんには、これを反面教師としていただきたい。
いや、こんな事したがる人が、精神世界のブログをウロチョロするとも思えませんが…。
自尊心を傷つけられた子供が、いかに悲惨か、という事実を知ってもらいたいと思います。
私は自分を責める事で、無意識に親をかばっています。
子供というのは、親を無条件に愛しているものなんですよ。
それが踏みにじられた子供の悲惨さといったら、そりゃもう大変なものです。
ひどい人間不信に陥り、さらに自分に自信が持ちづらくなります。
…子供を愛してあげてください。
お願いします。
しんじゅ☆♪