2011-02-21  レトリーバル No.15

カーテンをめくると、そこはフォーカス21で、当然ユアンさんが微笑んで待っていてくれる。

私「きゃー!!ユアンさん、大好きっ!!」

相変わらず、彼を見つけた途端、抱きついてしまう。

ひっくり返った彼に構わず、首からぶら下がってニコニコしてしまう。

傍から見たら、外国人の美青年に日本人の中年女性が襲いかかっているようなものだ。

(アイタタ、自分でこれ書いていて、辛くなってきた。
 読者の皆さん、自分、見た目年齢が実年齢より5〜7歳若く見えるらしいので、彼よりちょっとお姉さんがじゃれ付いているイメージに修正してくださいませ。)

初めは、彼の事を大好きなお兄さんともお父さんとも思っていたのだが。
次第に自分の兄弟の様に思えてきて、子供のようにじゃれついていた。
そして、幼馴染、友達、そして、同年代の異性から、素敵な男性に思えてきていたのだった。

いつものごとく彼の胸に飛び込むと、はっと、我に返る。

(アタシ、何でユアンさんに抱きついていたんだろう!
 子供じゃあるまいし、恥ずかしい…。)

慌てて身を引くと、ユアンさんがいぶかしげに私を見つめる。

(でも、でも、ユアンさんにかわいがられたいっ!!)

私「ユアンさん、頭、グリグリしてもいいですよっ!
  なんなら、抱っこも可です!!」

と、言って、目をつぶって、頭を彼に向けると彼が頭をナデナデしてくれる。

嬉しくて、キューンとなっていると、そのまま抱っこしてくれる。

私「あの、あの、やっぱり恥ずかしいから、もういいです。」

ユ「どうしたの?こうするの嫌なの?」

ユアンさんが慈愛に満ちた目で私をみて微笑む。

私「嫌じゃないですっ!大好きです!!」

再び、目を閉じて、彼の胸に甘えると、背中を撫でていた彼の手がピタリと止まる。

ユ「僕も大好きですよ。姫君。」

といって、ぎゅうっと抱きしめてくれた。

顔が赤くなる。

私は腕を突っ張り、彼から、体を離す。

私「ユアンさん、姫君は変ですよ。私はもう30代なんですから。
  恥ずかしいので、辞めてください。」

ユアンさんは少し悲しそうな顔をして。

ユ「そうか、変だったかな。ごめんね。」

と言って、謝ってくれた。

私は彼の端正な顔を見ながら、妙な胸騒ぎを覚えた。

いつものごとく、レトリーバルをサクサクこなし。

食事はパスして、フォーカス21へと戻ってきた。

ヒュン

私達はいだきあって、フォーカス21の緑の光かがやく草原に降り立つ。

風が吹き、草の先を乱れさせ、ザァザァと音を立てて、草原が風の姿を現している。

すると、帰って来いナレーションが流れてくる。

私「それじゃ、ユアンさん、また…。」

ユアンさんが体を離した私の右手を掴んで握手する。

ユ「うん、またね。」

そうして、ザァザァと草がざわめく音が鳴り響く中、彼は名残惜しそうに私の手を離した。



ローカル1に戻った私は、イヤフォンを外し、ため息をつく。

ユアンさんとのレトリーバルはそれはそれは楽しかったのだが。

現実世界の私はうらさびれた気分に包まれていた。

自分の父親の事が許せないでいたのだった。

そして、ヘミシンクの世界がキラキラと輝いて感じていればいるほど、ローカル1に戻った時の寂しさが募っていた。

家族と離れて一人暮らし。

友達は皆結婚して、子育てに追われ、遊び友達としては疎遠になっている。

しかも自分は持病をかかえ、土日は寝込んでばかり。

その上、どうやら、自分はユアンさんに淡い恋心を抱いているらしい。

ため息をつく。

不毛だ。彼は非物質の存在なのだから。

現実にはあんな極上の美形はそうはいない。

いたとしても、あんなに自分に優しくしてくれる男性が居るはずも無く。

なんだか、ヘミシンク自体が疎ましく感じられた。

(ほんとうに、あれは事実だったのだろうか。
 もしかしたら、自分の思い込みなのではないだろうか?)

そんな疑惑が頭をもたげる。

(そうだ、あの始めてのレトリーバル、あれは事実だったのか、インターネットで調べてみよう!)

初めてのレトリーバルから、3週間ほど経っていた。

そこで、私が体験した事実と異なる事を知る。

…もう、ヘミシンク辞めよう。

色々考えるのが、嫌になっていたのだった。


そして、私はヘミシンクを半年ほど休止する事になる。

さらに、その当時、適応障害という名の脳機能障害と診断され、向精神薬の投薬治療をして4年になっていた。

姉からの

 「あんたはちっとも病人らしくない!
  私が、あんたと一緒に心療内科に行ってやる。」

との申し出を受け、当時通っていた病院に、事情を説明し、二人で診察を受けた。

その結果、本人が不安に感じている間は投薬治療を勧めているだけです、との医者の回答を得た。

それなら、もう辞めます、と私達は答え、心療内科を後にした。

それから、1年8ヶ月。

特に不自由はしていない。

この病気が治ったのはヘミシンクの効果なのかどうかは医学的根拠はないのだが。

私個人には有効だったように思う。

これが、私と同じ病気を抱えた人への福音になればいい、との思いもあって、こうしてブログにしている。

投薬治療を辞めた結果、私は生殖能力を取り戻した。

そうして、遅ればせながら、婚活を始めていたのだった。

それがうまくいかなかったのはこのブログを読んでいればお分かりだと思う。


次回はこの自分レトリーバル(現世編E)での補足説明をしたいと思います。


オリジナルブログ

「レトリ−バル現世編」の記載されたブログは下記をご覧下さい

ヘミシンクとゆるゆる日記