私「いででででで〜、そんなに強く引っ張らないでー!」
友人K「いいから、早く、こっちこい!今日という今日こそ本気で怒ったからな!!」
私は友人Kに制服の首根っこを掴まれて、教室へ引きずり込まれる。
そして、廊下側の自分の席に投げつけられる格好で、着席する。
友人「お・ま・え・は〜!
何度言ったら分かるんだ!!
表で寝んなって、言ってんだろうが!!
どこの世の中に、自転車置き場で大の字で寝る女子高生がいる!!
一応、ここは共学だぞ!!
お前は自覚が足んなさすぎるんだ!!
しばくぞ!!」
私「えぇー!そんなぁ、だって、ホラ、ちょっと涼しい風が吹いていてさぁ。
なんてーの?青く透明な睡魔を見たって感じ?」
友人K「言い訳をするなぁ〜!
お前は狙われやすいッつってんだろ!!
その上男子学生も惑わしてどうすんだ!!」
私「は?何で男子が出てくんの?」
友人K「お前は〜!アタシよりかわいい顔して何言ってんだ!!
アタシがアンタのルックスだったら、男の一人や二人や三人や四人、転がしてオイシイ思いをしてやるのに!!こおの、どたわけがぁぁ〜!!」
私「何言ってんだK?それじゃ、私がかわいいみたいじゃないか?」
友人K「それじゃ何か?アタシがとんでもなく不細工だとでも言うのか!お前は!!
この口か?それはこの口が言うのか?あぁん?」
私「ふぉめんなふぁい。わらひがふぁるかったれす。ゆうひてくらはい。」
私は友人Kに両手でほっぺたを両サイドにギリギリと引っ張られる。
お互いにハァハァ、と息をつく。
友人K「いいか、しんじゅ☆♪。
くどいようだが、お前は霊媒体質なんだよ。
自分の身は自分で護れ。
それに男子学生を惑わすな。
イヤなら、さっさと彼氏を作れ。
それも霊能を消す一つの手段だぞ。」
私は左手の中指で目頭部分のメガネのフレームを持ち上げる。
私「…一つ、言っていいか?
この環境で、彼氏を探すのは至難の業だぞ。
見ろ、この荒れ果てた荒野を!!死屍累々の墓場だぞ!
全国の純真な男子学生の皆さんががっかりする事請け合いだ!!
皆、女を捨てた、猛者どもだ。
こいつら全員、恋愛という戦場では不戦敗決定だ!!」
バンっ!と右手で自分の机を強く叩き、左手で教室内を仰ぎ、友人Kの視線を誘導する。
私達がいたのは、商業高校の女子クラス。
そこは、共学に比べて、きっと、いや必ず、とっても女子が荒んでいる。
足を広げて、スカートをたくし上げるのは当たり前。
そこに下敷きを差し入れ、少しでも涼しくなるようにウチワの要領で仰いでいる。
セーラー服の胸当て部分の布地を外して、ブラストラップが見えてもお構いなし。
ぐしゃぐしゃと、長い髪をヘアゴムで適当なアップヘアにして、机に突っ伏している生徒や。
机の足元に、白いソックスを干して、裸足で口を開けて寝ている奴もいる。
強者になると、なぜか、購買部もないはずなのに、教室内で、ガリガリ君をかじっている奴までいる。
友人K「…まぁ、今のお前のセリフも一理あるな。」
ウルセ−ゾ!しんじゅ☆♪、お前が言うな!!
不快指数あげんじゃねぇ!!このメガネ処女がぁ!!
お前、どうせわき毛ボーボーだろっ!!とかの怒号が飛び交う。
私「やかましいっ!ちゃんと、手入れしとるわっ!この非処女ども!!
原チャリ通学してんのセンコーにチクるぞ!
お前、無免許だろ!!さっさと、持ち主に返して来い!!」
てめぇ、覚えてろっ!!と悪人特有の捨て台詞を吐いて、薄っぺらい学生かばんに鉄板をしこんでいる女子生徒1名が教室を出ていく。
友人K「…お前って、時どきすげーな。
あんな、おっかないのとどうしてタメ口なんだ?」
私「あぁ、あいつら、結構いい奴だぞ。食い物もくれるしな。」
友人K「お前のいい人の基準は食い物だけか?自尊心はないのか?」
私「何ソレ。食べれる?
食い物の前には自尊心など紙屑同然、ペラッペラだ!!」
友人K「…話を戻そう。
いいか、お前は霊的なガードができなきゃならない。
男が駄目ッてんなら、自分の能力をあげろ。」
私「ん?私はたいして霊感もないけどな。週に3・4回金縛りに会う程度だ。」
友人K「…と・に・か・く。
それじゃ、金縛りの時はどうしてんだ。」
私「どうもしない。ただやられっぱなしだ。
死ぬかと思うくらい、重いものが体の上に乗っかっていて、苦しみ続けるだけだ。」
友人K「予兆はないのか?」
私「うーん、そうだな。寝る前にイライラすんな。
そん時は必ずと言ってほど、金縛りにあう。」
友人K「姿は見えないんだな。」
私「なんか、ここ、空気悪いなって所か。
しっかり見えることは稀だな。」
友人K「まぁ、よし。大体の位置がつかめれば、やりようがある。
じゃあ、私の除霊方法を教えるよ。
まず、相手の位置を掴む。
そして、ソイツの回りごとガラスで固めるイメージをする。
そして、ガラスを一気に粉砕する。粉々にな!
これを強くイメージするんだ!!」
私「ガラス?なんだか、パリンと、簡単に割られそうなイメージなんだが。」
友人K「膜を張るイメージじゃない。ガラスに閉じ込めるんだ。
分厚くて、固い。
そうだな、黒色の特殊強化ガラスに漬け込むイメージを持つといい。
さらに、合言葉なりしぐさを付け加えて、自分流にアレンジするといい。」
私「なるほど。それなら、できそうだ。合言葉ねぇ。」
友人K「渇でも、破っでも、いい。」
私「お、『カルラ舞う』(著:永久保 貴一)ね!
フーン、…じゃ、『コンセントレーション』だ!」
友人K「英語か?たしか、『集中力』だな。まぁピッタリといえばピッタリだが。」
私「ふふっ。ジャンプの好きな漫画でね。
『ダイの大冒険』で、アバン先生が弟子ポップに言う名台詞があるんだよ。
『魔法はコンセントレーションですよ、コンセントレーション!』ってね。
除霊だなんで、なんだか、魔法使いみたいじゃない?」
友人K「…ま、健闘を祈るよ。
しかし、霊の気配を感じれるなら、お前は相当霊感が強いはずなんだが…。」
まぁ、そんなこんなで教室でそんな話をしていたもんです。
他の女子も途中から話に加わって、心霊質問箱の問答集になっていきましたが。
さて、その数日後。
友人S「し・ん・じゅ・☆♪!
フルーティな香りのする特別なキャンディ、いらない?」
私「頂く。」(←逡巡なし)
友人S(少女時代Hで体育倉庫に連れ込まれそうになった子)がニヤニヤしながら、私の手に個包装の物をポトリと落とす。
私「?」
私の手の中に入った物は全体的に赤やピンク地に、大小さまざまなハートマークがプリントされている。
その包装には英語でメッセージが書かれており、暑さが3mm程度しかない。
触ってみると、ぐにぐにとして柔らかく、ドーナツ型の形状をしているのが窺える。
一見して、食べ物の気配がしない。
キャンディだと聞いたが、グミなのか?と考えていると。
友人S「匂いを嗅いでみて!いい香りがするから!」
思わず鼻の近くに持っていくが、匂いは特にしない。
近くで包装に書かれた文字を読んでみる。
英語で「make lave]とある。
(愛を作る。きれいな言葉だな…。
これでどうやって愛をつくるんだろう?
ん?まてよ。メイク・ラブだと!!)
私「ッキャー!!」
と思わずそれを放り投げる。
友人S「やった!十秒持ったわよ!!私の勝ちね!」
友人F「ちっ、包装破るまで気づかないと思ったのに。」
友人Y「私は二十秒。くそ、負けた!」
友人I「二秒は大穴だと思ったのに…。お前鈍すぎ。」
友人S「さ、みなさん、匂いを嗅いだわよ。更に百円上乗せで頂戴!」
私「お・ま・え・ら〜!人を賭けで楽しみやがって!!
なんのつもりだ!!」
友人F「私から、処女のお前にプレゼントだ!!
ありがたくもらっておけ!!」
私「アホウ!今日は持ち物検査の日だぞ!!
何のイヤガラセだ!!」
友人I「バレたら、間違いなく生徒指導室行きだな。
ま、頑張れよ、しんじゅ☆♪」
友人Y「じゃ、そゆ事で。」
私「あぁ、みんな、これどーすんの!!」
友人F「ゴミ箱はまずいでしょ。
ブラにでも入れとけば?
お前のスッカスカだし、ちょうどいいだろ。
ま、刺激的な持ち物検査になるな。」
友人S「なんなら、私が入れてあげる!
さ、制服脱いで!」
制服を必死で押さえながら、
私「お前ら、いい加減にしろぉ〜」(←泣きそう)
友人F「覚えてろって言っただろ。身から出た錆だ。」
と、みんな教室を出て行ってしまった事がある。
結局、友人Sが女の子用ポーチにしまってくれて決着がついたんだが。
…結構、いじられキャラでした。
この話を下書きして、一休憩いれていたら。
ミカエルさんが大ウケしてました。
私「そ、そんなに、笑うことないでしょお!!
誰だって、子供の時あるんだから!!
それにこの時、もうユアンさん、私のガーディアンだったじゃない!
あなただって、この話、知ってるのになんでそんなに笑うのよ!」
と、私は自分の膝をペチペチ叩きながら不平を言うと。
ミ「あはは。ホントに君はかわいいね。
よく、私の所に来てくれたね。あはは。」
といって、後ろからギュウギュウ抱っこされてしまいました。
最近、ミカエルさんが、何か悩んでいる様子だったので、こんなに笑ってもらえてよかったなぁ、と思いました。