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少女時代2

小学3年のある日、そろばん塾の帰り道で、見知らぬ男に車に乗るように声をかけらましたが、無視しました。
その翌日、私は同じ男性から張り手を喰らわされます。
口と両膝から血を流して、泣きながら帰宅した私を見て、母親は仰天します。
私が父親の友人だと名乗る、見知らぬ男に殴られたと訴えると、父親は狼狽します。
「お前、親の気を引く為に、変な嘘をつくな。」と父親は言い、私の訴えを否定します。
しかしたまたま来ていた近所の人が警察に通報し、私は警官の質問を受けます。
警察の取調べが終わり、これで安心と思いきや、その後私は父親に「親に恥をかかせやがって!」と激しい折檻を受けます。
さらに数時間後、助けに現れた母親を目の前で父親に蹴飛ばされ、ショックのあまり失禁してしまいます。
暗闇の中、冷たいコンクリートの上に自分の尿と胃液と涙にまみれながら、後ろ手に縛られたまま、さらに数時間放置されます。
(もうやだ。〜生きるのがつらい。)
薄れていく意識の中で不思議な声が頭に響きます。

「お前はまだ幼い。可哀相だが自分ひとりの力では生きてはいけない。
 人に愚図だと思われていもいい。とにかく今は生き延びろ…。」



私「コン、コン。」

咳がでます。
あの事件の翌日、私は学校を休みました。
深夜に母に助け出されましたが、父親が起きてくるのを避けるため、
風呂に入ることなく休んだ為、風邪を引いてしまったのです。

父「しんじゅ☆♪具合はどうだ?アイス食うか?」

父親が心配げに2階の私の部屋へ入って来ます。
普段と変わりがありません。
父親は私を3〜4ヶ月に一度の頻度で折檻をしていました。
その時意外は朗らかで優しい人物なのです。

私「…。」

私は首だけ父親を振り返りながら、布団の中で体をこわばらせます。

父「お前、ご飯残しただろ。好物のアイスを持ってきてやったぞ。」

私「…うん。」

まるで、屈託がありません。昨夜の出来事はなんだったのだろうか、とめまいを覚えます。

父「お前は小さい時から体が弱いからなぁ。
  それに、昨日はひどい目に会った。可哀相に。」

私「…アイス、食べていい?」

父「おう、食べていいぞ。そのために持ってきてやったんだからな。
  …それでな、しんじゅ☆♪。
  夕べの事は誰にも言ってはいけないぞ。
  お父さん、しんじゅ☆♪が、かわいくて大事だからな。
  そうでないと、お父さん、もっとひどい事をしなくちゃならん。」

頭にカッと血がのぼります。
その瞬間、脳裏に

「人に愚図だと思われてもいい。とにかく今は生き延びろ」

という声が蘇ります。

私「…アイス、おいしい。
  お父さん、しんじゅ☆♪バカだから、昨日の事、よく覚えてないの。
  だから、誰にも言わないよ。
  アイスもう一個食べてもいい?」

父「そうか、そうか。すぐに持ってきてやるぞ。
  お前は昨日ひどい目に会ったからな。警察なんてあてにならん。
  お父さんがそいつを捕まえて、お前に詫びさせてやりたい位だ。
  ちょっと待っていろ。」

父親はいそいそと部屋を出て行きます。
私は、内心こんな子供だましの言葉で大人を騙せるものかとヒヤヒヤしていたのが、あっさりうまくいった事に驚いていました。

階段をキシキシと音を立てて降りていく父親の後ろ姿を見て、
私は「お前が死んで詫びろ。」と内心毒づいています。

父親の気配が消えて、息をつき、窓の外を見ます。
曇り空が拡がり、白い空に電線が黒い線を描いています。

あの大人は体が大きくても、心は私より幼いのかも知れない…。
そう、気づきました。

そうだ、そうでなければ子供を、妻をあんな目に遭わせたりはしないはずだ。

「人に愚図だと思われてもいい。とにかく今は生き延びろ」

…あの声はなんだったんだろう。

ただ、あの声の言っている事は、自分の父親より、よほど人間的だと直感しました。

あの声がなんだったのかは、わからない。
でも、とにかくあの声のおかげで私は今、ピンチをすり抜けれたと思う。

お父さんは大人だけれど子供だ。
でも大人だから周りの人は普通のお父さんだと思うはずだ。

もう、気づいてしまった。
意識を変えよう。いや、認識を変えるんだ。
この前、国語で習ったばかりの言葉だが、これがピッタリだ。
私は認識を変える。

あの男はいつ暴力を振るうか分からない。
子供だからといって容赦はしない。

ここは平和な家庭ではない。
ここは戦場だ。

生き延びる為にはバカになれ。
あれは白人の上官で、私は黒人の下っ端兵隊だ。
いつ捨て駒にされるか分かったものではない。
大事なのは生き延びる事だ。

「バカの振りした賢い奴が生き延びるのさ。」

先週の日曜日にテレビでやっていた洋画のラストシーンが蘇る。

さっきの自分のセリフも微妙なものだったが、幸い父親は気づいていない。
昨夜の状態を思えば、こうして温かい布団に包まれ、水や食料を与えられる。
はるかにましだか、いつ逆戻りになるか知れたものではない。

どんなに泣いて頼んでも、振り下ろす手を止めたりはしない。
神様、助けて。仏様、お願い。誰か私を助けて。

どんなに心で強く願っても、その願いは叶う事はなかった。
神や仏なんていやしない。

いるとすれば鬼や悪魔だ。
それは私を痛めつける、目の前の男に宿っている。

私は神を信じない。私は仏を信じはしない。
そんなものはいやしない。

昨夜は古代エジプトのミイラの話で気を紛らわせていたものだが。
ずいぶんと子供じみた考えを持っていたものだ。
生まれ変わりを信じているとはバカらしい。

私は生まれ変わりなど期待しない。
信じられるのは今自分が生きているという事実だけ。

そうだ、そろばん塾もほどほどにしよう…。
いじめもひどくなって来ていたし、そろそろ潮時だな…。

塾では靴や自転車の鍵が隠され、月謝の一部がたびたび盗まれていたのだった。
そもそも、塾でのいじめのきっかけは父親が教室で講師にこう言ったのが原因だ。

「家の子供の中で特に出来の悪いのがこの子だ。
 この子がこの塾で有望だというのなら、他の生徒がよほど出来が悪いのだろう。
 馬鹿な生徒ばかり持って先生も大変だな。じゃあなしんじゅ☆♪頑張れよ。」

その瞬間、教室の空気が殺気立ったのが分かった。


認識を変えろ、私はバカだ。
バカになれ。愚図にならなきゃ生き残れない。

涙を流しながら、再び眠りに落ちていく。


父「しんじゅ☆♪アイス持ってきてやったぞ?寝たのか?」

私はそのまま眠りに落ちていった。


                                     


さて、すっかり忘れていましたが、この時すでにガイドの導きを得ていたようですね。
極限状態になるとこういった天啓みたいなものが降りるものなのかも知れません。

ここでは父の折檻しか書いていませんが、こういった事件、事故に私はこの後数十件遭遇する事になります。
すべてほとんど無傷ですよ。私の貞操は守られています!!
さっきも交差点でガンミしてくるオッサンがいるなぁ、と思ったら、いきなりジッパーを降ろし始めまして…。
まぁ、背中向けて立ちションし始めたのですが。
あぁ、またかよ。って感じです。
ミカエルさんが、私は雑多なものを惹きつけると言ったのはこうゆう事なのかな、と思いますね。

次回は小学四年生の体験についてお話したいと思います。



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