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少女時代7

「しんじゅ☆♪、お前、また廊下で寝てたらしいな!
 外で寝んなって、あれほど言っただろうが!!」

教室のドアをあけるなり、友人Kが説教を始めた。

私「え〜、いつの話?」

友人K「昨日の話だ、昨日の!
    ウチの部活の後輩があの人、先輩の友人ですよね?って教えてくれたんだよ。
    お前は〜。所構わず寝るなって言ってんだろうが!!」

私「つい、うっかり。眠くって。」

友人K「寝るなら自宅で寝ろって。せめて、学校なら席に着いた状態で寝ろ!」

友人R「あ〜、しんじゅ☆♪ちゃん、こないだ、校門の側の道路で寝てたよ。
    1年生の子達が騒いでたから、何事かと思ったら、セーラー服のまま道端で寝てるんだもん。
    慌てて起こしたよ、私。」

友人Y「部室でもいつも寝てる。みんなタイピングしててすごくやかましいのに。
    信じられない。」

友人U「あ、こないだ体育館でも寝てた。
    しかも制服だったよ。」

友人K「お、ま、え、はぁ〜。
    女子高生という自覚が無いのか!」

あたしは自転車置き場で、こないだはボーリングしに行ったら、そこでも寝てた、との証言が飛び交う。

私「いやぁ、何でかわからんけど、眠くってね。
  そういや、こないだ公園で創竜伝を読んでたら、超眠くって。
  ベンチでサブバックを枕に寝てたらさ。
  気がついたら、見知らぬ男が、頭の側で、ベルトのバックルを外しているところでさ。
  脱兎、という言葉がピッタリの勢いで、マッハで逃げたわ。」

友人K「アンタは〜、性犯罪を誘発してどうする!
    愛知県警の仕事を増やす気か、このやろう!」

私「あだだだだだだ〜、頭痛い、やめて〜。」

友人Kにこめかみを両手でグリグリと挟まれてしまう。

友人K「どこの公園だ!言ってみろ。それにそんな事何回目だ!」

私「○○○神社(県内でも有数の格式の高い神社)の裏の公園。
  ズボン下ろされそうになったのは三回目かな?」

友人「お前は、いい加減に自分が狙われやすい体質だと気づけ!」

友人R「あれ、しんじゅ☆♪ちゃん、その絆創膏どうしたの?」

私「うん、昨日、たまたま電車にのる用事があって、○○線のホームにいたら。
  なんか、昼間だって言うのに酔っ払いが暴れだして。
  それに巻き込まれて、うっかりホームに落ちそうになったんだよ。
  なんとか、落ちずにすんだからよかったよ。
  その代わり、手を強く擦りむいちゃったの。
  あんまり見知らぬ男に纏わりつかれるのが嫌で習った格闘技だけど、
  そのおかげで腕力がついたのかな?
  よかった!」

友人Y「よくない、よくない。
    私、毎日電車通学してるけど、そんな目に会った事一度も無いよ?
    なんで?電車なんて、そう乗らないでしょ?」

私「うん、半年に1・2回くらいかな?」

友人R「まさか、ホームに転落してたら、すぐに電車が飛び込んでくる所だったとかじゃないよね?」

私「うん、大丈夫だったよ、30〜40秒後だったと思う。」

友人K「おいおい、もし、ホームに転落して、頭でも打って気絶してたら轢かれてんじゃねーか!」

私「大丈夫だって、そんな事にならなかったんだし。」

友人K「おかしいだろ。
    大体その路線、30分に1本なんだから、お前ピンポイントでやばかったぞ。」

友人Y「この人、そういえば先週首に包帯巻いてたよね。」

私「あぁ、なんか、目が覚めたら首が回らなくって。参ったわ。
  スター・ウォーズのドルイド並みに動きが制限されたわ。」

友人R「先月も車に轢かれたって言ってたよね。」

私「うん、大丈夫。
  自転車は大破したけど、私はピンピンしてるし。
  相手の人が自転車弁償してくれたよ。
  去年も事故に遭ったから、これで2度目かな?」

友人U「2週間前にも、痴漢に会ったって言ってなかったっけ?
    あれ?3週間前だっけ?」

私「うん、両方。マジびびったよ。
  男なら、色気の無いガキを狙わずに、熟女を狙えっちゅうねん。」

友人K「ちょっと待て。アンタ、高校に入学してどれだけ遭ってんだ?」

私「う〜ん、20回弱かな?」

友人K「入学して何ヶ月だ。」

私「…15ヶ月か。」

友人K「月一以上のペースじゃないか!
    お前、それ明らかに異常だぞ。いい加減気づけ。」

私「えぇー、そうかなぁ。皆痴漢に会わないの?」

周りの女子全員首を横にふる。
私が進学したのは商業高校で、学生の8割を女子が占める。
私は女子クラスに在籍していた。
そして友人Kは人気者でもあると同時に強い霊感の持ち主でもあり、またそれは周知の事実でもあった。

友人K「しんじゅ☆♪な。何度も言うが、それは霊障だ。
    所構わず寝るのも、その一つだ。
    アンタは無自覚だが、霊感が強いんだよ。
    だから、一人で神社とか寺には近づくな!
    ついでに言えば、首が回らないのは神仏のたたりだ。
    アンタの親父が神社で粗相をしでかした代償なんだよ。」

私「や、アタシ、神とか仏とか信じてないし。
  大体、なんで親父のしでかした事が私の身にふりかかるんだ?
  おかしくね?」

友人K「神仏の世界では、不興をこうむった場合、原因である本人を含めて、家族全員に霊障がふりかかるもんなんだよ。
    特徴は首から上にでるんだ。」

周りの女子生徒がへぇー、そうなんだー。怖いー。と頷く。
あれ、しんじゅ☆♪ちゃん、やばいんじゃない?と心配もされる。

私「そういや、兄弟達も目がかすむ、とか頭痛がするって言ってたけど、親父ピンピンしてたぞ。  
  連帯責任っていうのは何となく分かるけど私だけ罰がひどいのは変じゃね?」

友人K「アンタが家族の中で一番古い魂を持っているからなんだよ。
    神仏のたたりは家長に一番重く降りかかるもんなんだ。」

私「は?古い魂?子供の私が親父より古いって事?」

友人「転生を繰り返して、魂の精神年齢が高いって事だ。
   肉体の年齢とは異なる場合もなる。
   お前の親父は体は大人でも、魂はお前より幼いって事だよ。」

周りの生徒達もなるほど、そうなんだ、と感心する。
しんじゅ☆♪が精神年齢が高いってのはちと微妙だよな、と頷き合っているが。

私「どちらにせよ、理不尽な話だな、おい。
  神仏の世界のルールはよく分かったが、親父の不始末が私にお鉢が回ってくるっていうだけじゃねぇか。
  やってらんねぇよ。」

友人「だ・か・ら。アンタは何か信心しろ。
   仏教でも、神道でも、キリスト教でもいい。
   神仏の加護が強まれば、変な奴らも寄り付かなくなるよ。
   アンタは霊力が高い割りに、ガードがまるで出来ていない。
   しんじゅ☆♪は強い霊媒体質なんだ。
   自分の守護霊と交信だってできるはずなんだから。
   アンタは自分が思っている以上に目立つ存在なんだよ。
   しんじゅ☆♪の周りの機械がぶっ壊れるのも、
   アンタが成功するのを邪魔したい存在がいる為なんだから。」

私「は?私の成功を邪魔したい存在?
  随分と大げさだなぁ。私はただの田舎の女子高生だって。
  大体、私は神も仏も信じない。  
  生まれ変わりも1mgもあてにしていない。
  もし、神が本当にいるのなら、世の中の悪を今すぐ消してくれって言うよ。
  でも、Kの言っている事を信じていない訳じゃないよ。
  私は宗教が大っ嫌いなんだ。」

友人K「アンタは〜。
    自分の身を守れなくてどーすんの!
    今はウチの守護霊が手伝ってくれているけど、あんたいつも凄い量の霊を背負っているんだよ。 
    そんだけ憑かれていて正気でいられるのが不思議な位なんだから。
    いつもスレスレの状態なんだからね!
    私は忠告したんだから、もう知らないよ。」

私「そうか。いつも守ってくれていたんだね。
  ありがとう。
  でも、私は神や仏や生まれ変わりをあてにはしない。
  前世の因縁の解消の為に今を生きるなんてナンセンスだし。
  来世の幸せをあてにして、今を犠牲にするのもおかしいと思う。
  そんなのは宗教団体のお布施欲しさの詭弁だと思うんだ。」

友人K「そりゃ、そうだけど。」

私「神や仏はご飯をくれないし、今ある暴力を止めてくんない。
  人間の世界の事は自分達で解決すべきだと思う。
  まぁ、生まれ変わりが存在しないとまでは思わないけどさ。

  私は子供が過去の象徴で、お年寄りが未来の象徴だと思うんだ。
  子供やお年寄りが悲しい顔をした世の中はおかしいし、絶対嫌だ。
  みんな笑顔で暮らせる世の中にしたいと思っている。

  私達学生ははまだ大人じゃないし、子供でもない、微妙な立場だけれど。
  何者でもない変わりに、何者にもなれる可能性があると思っているんだ。
  だから、私に何ができるのかは分からないけれど。
  将来世の中の役に立つ大人になりたいと思って勉強しているよ。
  だから私にとって、目に見えない世界の事は二の次、三の次なんだ。」

友人K「お前は〜。
    なんでそう、時々ピュアな事言うんだよ〜。
    いいよ、もう、分かったよ。
    卒業まではアンタの面倒みてやるよ。
    あんたがいつもスレスレで助かっているのはアンタのそういう所なんだよ。
    あんたを守護してる奴ら、泣いて喜んでるよ。
    今までの苦労が報われたって感激してるよ。 
    あぁ〜、アンタ見えないんだっけ。」

私は背後を振り返り、上空を見つめながら頭に方手をかざす。

私「あ、どうも!引き続きヨロシクッ!」

友人K「お前、ちゃっかりしてんなぁ〜。」



こんなやりとりをしたのは高校2年生の初夏の時だった。
  


友人K「お前の事、バカ君って呼んですまないって、謝ってる男がいるぞ。」

私「は?バカ殿?」

友人K「いや、バカ君だって。学習能力の無い女だと思っていたってさ。」

私「なんか、それヒドクね?」

友人K「悪いが私はソイツに賛成だね。」

私「え、何かそれもヒドクね?」

友人K「お前も顔にオシロイでも塗ってろ!!
    ついでにちょんまげを付けてな!
    そうすりゃ、変な女と思われて、男に襲われる事も無くなるだろ!」

私「え、それもヒドクね?」



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