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少女時代21

友人M「おい、しんじゅ☆♪、お前、襲われかけているぞ。」

教室の机に突っ伏して寝ていた私の耳に、悪友のセリフが飛び込んでくる。

ふと、目を開けると、友人Sの顔がドアップで迫ってきている。

思わず、枕にしていた本の角で、彼女の頭を叩く。

友人S「イッター!何すんの!」

私「それはこっちのセリフだ!今、何しようとしてた!」

友人S「えぇ〜?お目覚めのキス?」

私「やめろって。そーゆー趣味無いから!ホントおかしな奴だな〜。」

友人S「ちぇっ!もう少しだったのに!M!テメー邪魔すんな!ぶっ殺す!」

友人M「あー、はいはい。邪魔して悪かったね。
    どうも、ワタクシの美意識が許さなくてね。
    教室で濡れ場を演出されると、無性にチャチャをいれたくなって、しょうがないんだよ。」

黒々としたおかっぱ髪にめがねをかけた友人Mが、腕組みをほどいて、右手の指先でフレームをつかんでメガネかけ直す。
彼女は小さな身長に大きな瞳、そしてとがった口元。
そして、年に似合わず、堂々とした風格に憎まれ口が絶えない。
私の中で彼女のイメージはムーミンに出てくるリトル・ミーみたいな印象がある。

友人K「あー、はいはい。そこまでそこまで。
    しんじゅ☆♪、お前もあんま人前で無防備に寝るなよ。」

私「教室で同性に襲われるなんで、普通想定できないだろ。」

友人K「あぁ〜、まあなぁ。」

口を尖らせて抗議をする私達をいさめてくれたのは、霊感少女のK。
彼女も小柄で色白。ちょっとポチャッとした外見だが、とても頭の回転が速く、ユーモアセンスがある。
なにより、面倒見がいい、お姉さんタイプの人物だ。

友人M「それより、しんじゅ☆♪、このワタクシに何か言う事は無いのか?」

私「あ、M、サンキュ!グッタイミ☆」

友人S「チッ!せっかくのチャンスを!」

私「S、お前、またパーな事言って。
  さっさとバイト行けよ。」

友人S「んもう!それじゃ、またね!マイ・スイート・エンジェル!」

そう言って、周りの男性を振り向かせるほどの美貌の少女は長い髪をたなびかせて笑顔で手を振って教室を出て行った。
ひょんな事から、彼女に気に入られていた私は、彼女からたびたびああやってからかわれていた。

友人M「さ、しんじゅ☆♪。寝起きで悪いが、Rちゃんが来るのを待って、実行委員の仕事で買出しに行くぞ。」

友人Y「あ、しんじゅ☆♪氏、起きた〜?この人、一度寝だすと中々起きないんだよね〜。」

同じく実行委員で、私の一番の親友である、友人Yが、のほほんとした笑顔で近づいてくる。
大人しくて、優しい彼女が実はこの学校で一番成績がよかったと私が知ったのは、卒業式の日の事だった。

友人K「いっそ、寝かし続けて、Sの想いを叶えさせてやったらどうだ?
    夢の世界にいる間にちゃっちゃと済ませてやればよかったんだよ。
    こいつ、お子様だしな。」

友人M「今度はそーする。」

私「Mお前、今サクッと見殺し発言しやがったな。
  それはそうと、妙な夢を見た。」

友人M「何々?予知夢とか?」

私「夢の中で、私は旅館の経営者の娘かなんかで。
  兄がいて、青色のパジャマ姿で側にいるんだけど。
  そしたら、兄の見合い相手だか、婚約者的な女性が、ヒステリックにこっち向って叫ぶんだよ。
  「レイを色気づいた目で見るな」とかなんとか。
  そんで、その女の人に、無性にむかついて、あんたなんかに渡さないって、怒鳴りだす夢。
  別にお兄ちゃんっ子でもないのに、妙な夢を見たなぁ。」

友人K「その女の人、知ってる人か?」

私「いや、全然?そもそも夢の中の兄も知らない中年男性だったよ。
  見たことないパジャマ着てたし。
  そんでも、なぜか自分の兄だと思っているんだ。」

友人M「ふーん。変な夢だな。
    ホントはブラコンなんじゃないか?」

私「いや?全然?むしろシスコンだな、私は。
  で、面白いのは、それが夢だと気づくんだ。
  それで、目が覚めた後、夢の中のレイは自分の兄ではないって気づくんだよ。
  偶然同じ名前なだけで、勘違いしていたんだなって笑っちゃうんだ。」

友人Y「へぇ〜。しんじゅ☆♪氏のお兄さんって、レイって名前なんだ。」

友人K「アレ?お前の兄貴って、そんな名前だったか?」

私「いや?違うよ。でも良く似た名前だしな。聞き間違えたかな?
  う〜ん、でもレイと聞こえた気がするんだ。

  そんで、その後も怖いんだ。
  自宅の封じられた玄関のあたりをウロウロすると。
  床や地面に一面に蜂の死体がゴロゴロ転がっているんだ。
  足の踏み場も無いくらい。
  そしたら、無性に悲しくなって、喉がオエッてなって。
  私の口の中から、ポロポロと蜂の死体が溢れてきて、吐き出すっていう夢。」

友人Y「ウワッ!怖いわ、それ。」

友人M「ホラーだな。そりゃ。」

友人K「うーん。前半の話はよく分からんが。
    多分、お前、女王蜂の前世があるんだよ。
    それか、宇宙人だな。
    一人で大勢の子孫を残す役割があったんだが、志半ばで死んだ。
    その象徴の夢だな、きっと。
    なにか思い当たる事はないか?」

私「そうだな。虫って、すぐ感じ取れる。
  窓開けて欲しいとか、喉が渇いたとか。

  突然、教室で立ち上がって、窓を開けに言って、カナブンを逃がしてやっていたりしたから。
  小学生の時のあだ名が宇宙人だったな。

  死にかけの虫とかの悲鳴がよく聞こえるな。
  声が聞こえるんじゃない。耳がキーンとなるっていうか。
  頭がクラクラするっていうか。
  目が知らずに惹きつけられて、そこに行くと、大抵瀕死の昆虫がいる。
  
  それに、小学3年の時の夏休みの自由課題で蜂の生態を提出したら。
  教師に大絶賛された。それくらいかな?」

友人K「それだ!お前、ほんと前世面白いな。全部は見れないけど。
    お前の前世を見ようとすると、お前を狙っている奴らに目をつけられるから見れないんだよ。
    ほんと、お前の前世、おっかないぞ。
    逆さ磔とかな。おっと、ここまでか。」

友人M「さっき、何気に聞いていたけど。
    封印された玄関ってのはなんだ?夢の世界の揶揄か?」

私「いや?ウチ、商売やっているから、お店の出入り口や、車庫の方のシャッターから出入りしているんだよ。
  自宅の玄関は長いこと、物置になっているんだ。
  そこに、大きな蛇が長年引っ掛かっていて。
  気持ち悪くて、使わないんだよ。」

友人Y「え?蛇がひっかかる?意味がわからない?」

私「うーん、玄関の扉の隙間に、なぜか蛇がそこを通ろうとしたんだろうね。
  でも、お腹で引っ掛かって、通れず、そのまま死んじゃっていたの。
  ずっと倉庫で電気もつけないでほったらかしだったから、長年その状態で。
  子供心に、どうも、あの暗がりの紐は蛇のような気がするって思っていたけど。
  気持ち悪いから、ほったらかしにしてたのよ。
  お母さんが亡くなって、人の出入りがあるから、玄関を掃除しようとしたら、大きな蛇だったって訳。」

友人M「うわっ!気持ち悪ッ!」

友人K「…お前ん家、ワケアリだとは思っていたが、そんな因縁が…。
    確かお前の家、井戸があるとか言ってなかったか?
    仏壇が二階にあるとか言ってたしな。」

私「あぁ、仏壇は二階で私の部屋の隣だな。
  その下に井戸がある。」

友人M「え?井戸の上に部屋がある?そんな木造家屋、聞いた事無いぞ?」

私「家は鉄筋だ。元々何かの工場かなんかが倒産して、売りに出された土地を分譲で買っているんだ。
  それで、井戸の水で、お店の冷房に使われているし、実際に飲み水としても使える。
  だが、鉄分が多くて、マズイし、タイルが茶色になるから、普段は使わない。
  井戸って言っても、水面が見えるわけじゃなくて、完全に機械で蓋をされて、汲み上げされているんだ。
  そんで、井戸を取り囲むように二階のベランダがあって、私はよくそこから飛び降りて脱走をしていた。」

友人M「鉄筋の家?それなら構造的にありえるか。」

友人K「井戸があるって事は、地下に水脈が流れているってことだな。」

私「あぁ、だから、ご近所はその分譲で元々はつながった土地だったんだけど。
  その裏手には簡易水道があるね。よくそこで蛇を見つけて遊んだもんだ。」

友人K「…お前んちの住所って、確か川にちなんだ地名だったよな。
    しかも、仏壇が2階か。最悪だな。
    霊が集まってしょうがない。
    アタシ、あんたん家、おっかなくて入れないよ。」

友人M「あぁ、まさしくホーンテッド・マンションだな…。
    マンションじゃなくて、ハウスか。」

私「ホーンテッド?」

友人Y「幽霊屋敷って事だよ。びっくりだね。
    霊感のない私もしんじゅ☆♪氏の家に行きたくないよ。」

友人M「しんじゅ☆♪の家に一回行ったことあるけど。
    あれが噂の玄関だったのか!
    なんか、横に岩がゴロゴロしてたし。
    ジメってして、薄暗かったし。
    オカルト風味、満載だったな。」

友人K「植物、育たないことないか?」

私「そういえば、ウチのお母さんがお嫁に来た時に、梅の木を植えたらしいんだけど。
  一度も花をつけたこと無いんだよね。東向きの玄関なのに。珍しいのかな。」

友人K「なんで、岩があるんだ?」

私「さぁ?梅は育たないけど、榊とかは生えているよ。」

友人K「…もういい。お前んち、絶対ワケアリだから。
    突っ込みたくないし、遊びに行きたくないな。
    何が飛び出してきてもおかしくない。心臓に悪すぎる。」

友人M「ビックリしたと言えば、お前の姉ちゃん!
    何だよ、アレは!!」

友人Y「何々〜?口が悪くて、乱暴者のお姉さんでしょ?」

友人M「いや、しんじゅ☆♪が、ウチの姉ちゃん、スゴイ可愛いって言ってたからよ。
    まぁ、どの程度か見てやろうと思っていたら。」

友人K「凄かっただろ。しんじゅ☆♪の姉ちゃん。」

友人M「あぁ、凄いってレベルじゃねー。
    超だよ。超ド級に可愛いよ。
    何アレ?
    この、口から生まれたような、このアタクシが、思わず言語障害に陥るほどの美女じゃん。」

私「あ、口から生まれたってのは、認めるんだ。」

友人M「やかましぃ!立て板に水の口上を述べられる、優れた言語能力を持ち合わせたこのアタクシが思わず固まちゃったのよ!屈辱〜!
    そんで、普通に挨拶してくれたじゃん。優しそうにさ。
    でも部屋にいるアンタに向って、怒鳴っているのが聞こえて、本当に口悪いんだってビックリしたよ。
    何アレ、何アレ?アタシが男なら、貢いじゃうね!」

友人Y「ほぇー、そんな美女なんだぁ〜。」

友人M「あぁ、美女も美女。絶世の美女って言葉は、小説の中だけだと思っていたけど。
    現実にいるんだな。傾国の美女っての?
    多分、そのレベルだ。ちょっと言いすぎだな。でも限りなくそれに近い。

    しんじゅ☆♪がいくら可愛いって言っても、所詮しんじゅ☆♪の姉ちゃんじゃん。
    そう、たかをくくっていたら、あの顔。そしてあの性格。
    まさしくリナ・インバースの姉ちゃんだな。」 

友人K「あぁ、アタシも遠くにしんじゅ☆♪の姉ちゃんを見たことあったけど。
    (友人Kとは、小・中・高が一緒)
    この間、始めて間近で見て、度胆を抜かれたよ。

    同じ地球に同性として産まれたことを、後悔するほどの美女だ。
    思わずこのルックスに生まれついた事を、神に呪いたくなったね。
    しんじゅ☆♪、あんな姉ちゃんに比べられて育ったお前には同情するよ。
    その点、お前は庶民的でホッとする。安心したよ。」

友人R「お待たせ〜。買出しに行こうか?
    何何〜?しんじゅ☆♪ちゃんのお姉さんの話?
    あぁ〜、綺麗だよね〜。」

友人M「何?どこで見たの?」

私「去年の三者面談の時に、チラッとね。
  ウチのお母さんが、アレは愛人が後妻に入ったのかって聞いてきたよ。
  
  ウチらと4歳違いなら、まだ十代なのに、凄い色気があって、綺麗な女の人だよね。
  しんじゅ☆♪ちゃんが、憧れるの、わかるなぁ〜。」

友人M「くくく。やっぱり血縁だと思われていないな。
    全然似てない。」

友人R「えぇ〜?そうかぁ?
    どことな〜く、似ているよぅ。
    しんじゅ☆♪ちゃん、よく見るとかわいいもん。」

私「ぐ。いいよ、慰めなんて。慣れてる。」

友人R「いやいやいや。今のは言い方が悪かった!
    本当、かわいいよ、しんじゅ☆♪ちゃんは。」

友人M「ま、慰めの言葉はいらないんだろ?
    お前は庶民的なんだから、庶民らしく、たくましく生きろ。
    さ、面子が揃ったところで、買出しに行くか!」




なんか、そんな事を思い出しました。
これ、ヘミ的には、意味わかんないですよね?

ごめんなさい。
それではまた。



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