私(…年の頃なら、16〜17歳か…。
嫁に行ってもいい頃合いだが、この国の娘たちは幼いな…。
あんなに素肌をさらしていても、あまり色気が無い。
肉付きが薄いんだな。
しかし、あの象牙色の肌は美しいな…。)
そこは、商業高校の教室内で、女子生徒達が、制服から体操服へと着替えをしている最中でした。
私はいち早く、着替えを終わって、椅子に腰かけ、他の女生徒の着替え風景を机に両肘をつき、両手を組んでその上に顎を乗せて眺めています。
私(あれが、ブルマというものか。
運動用の衣装というが、これもなかなか…。)
ベシッ!!
突然、視界が塞がれます。
気付けば、紺色のサブバックで頭をはたかれています。
私「…うん?突然、何をする。」
友人K「うん?じゃ、ねぇ!!何を覗いてんだ!」
霊感少女の友人Kが、自分のサブバックで私の頭をはたき、制服姿で仁王立ちして怒っていました。
私「覗きとは人聞きの悪い。
好奇心から来る、単なる観察と言って欲しいな。」
K「女子高生は、そんな舐める様な目で女子生徒の着替えを眺めない!!
誰だ、テメェ!」
私「誰とは、これいかに。
不思議な事を言うご学友だな。」
K「不思議な事を言ってんのは、お前だ!
しんじゅ☆♪は、そんな言い方しねぇっ!!」
私「そうか?」
K「おかしいだろっ!
普通頭をはったかれたら、痛い!とか言うだろ!」
私「痛かったぞ?」
K「その話し方が、もう、しんじゅ☆♪じゃねぇって言ってんだ!」
私「まぁ、そう怒るな。ごく普通の女子高生の言動だと思うのだが。」
K「あいつは、いつも、『眠い』か『お腹減った』か『それ食べれる?』が基本だ。
アタシの事を学友とか、言わねぇ!
ボキャブラリーに無いんだって!」
私「さんざんな言われようだな。」
K「ちっ!!どこで拾ってきた。」
友人Kがイライラした面持ちで、右手をあげる。
彼女が私に憑いてきた浮遊霊を祓う時の合図が指パッチンだから、その準備をしているのだ。
私は左手を上げて、彼女の右手を包み込むようにして、その動きを制止する。
私「まぁ、待て。『私』は、『私』だ。」
K「『私』だと?…」
友人Kは、耳を澄ますような表情をする。
K「中身、オッサンじゃねぇか!
それも外人。
こいつ、いつ、どこで、こんなもん拾ってきやがった!」
私「オッサンとは、心外な。せめて年配の男性と言って欲しい所だ。
これ、このとおり、どこにでもいる普通の女子学生だ。」
ベシッ!!
私の脳天に友人Kの立てチョップが炸裂します。
K「嘘をつけっ!
日本の女子高生をなめんなよっ!!
くそ、がっちり重なってやがる。
こいつの、前世か?」
私「ほら。そんな詮索よりも、早く着替えなくていいのか?(笑)」
私は自分の頭を片手でさすりつつ、ニヤニヤしながら、友人Kのサブバックを差し出します。
バックの中身は体操服が入っているのを知っているからでした。
K「やかましぃ!!女子生徒の着替えをのぞく変態の側で着替えれるかぁ!!
もう、怒ったぞ。
今日という今日こそは、お前の正体を暴く!」
私「やめたが、いいぞ。(笑)」
K「いいや。以前から気になってたんだ。
なんで、コイツに災難が降りかかり続けてんのか。
こいつのオーラがしょっちゅう変わってんのか!」
友人Kは険しい表情をして、何か神経を集中しているような風情をしたかと思うと。
大きく瞳を開いて、小さく叫びました。
K「うわっ!!」
私「視えたか。聡い目をしているな。
あまりこれに関わるな。
魂をとられるぞ。」
K「な…な…。」
私「この娘が災難に見舞われるのは、この娘の周りの者が同じ目に遭うのを防ぐ為だ。
同じ学校に通う者が、不幸な目に遭うのに心を痛めている。
私をはじめ、この娘は守護が強いから、この程度の災難で済んでいるのだ。
しかし、大勢の者の災厄を一身に集めているから、いつもボロボロだ。
学友殿にも、迷惑をかけているが、感謝している。
だが、ほどほどにしておかぬと、目を付けられるぞ、見鬼殿。
(↑注:けんきどの:霊を見る事が出来る人の事)」
友人Kはワナワナと震えたかと思うと。
一気に駆け出して、教室を飛び出して行きました。
友人M「ん?どったの?なんでKは出てった?」
私「え?さぁ?」
着替えを終えた、友人Mが私の席の隣に来て、話しかけてきました。
一緒に、友人Yも側に来ています。
しかし私は今の今まで友人Kと交わしていた会話を全て忘れていました。
すると、教室の扉が勢いよく開き、友人Kが顔だけを出して叫びました。
K「しんじゅ☆♪!お前、キリスト教を信心しろっ!!
アタシおっかねぇよ!
アタシだって、自分がかわいいから、これ以上は無理っ!!
自分の身は自分で守れ!
逆さ磔にされても、知らないからなっ!!」
それだけ言うと、再びドアを勢いよく閉じて、出て行ってしまいました。
私「何?アレ?」
友人M「逆さ磔?スリーパーホールド?
何、お前ら、キン肉マンの話でもしてたのか?」
私「知んね。生理じゃね?」
友人M「あぁ…。」
友人Y「しんじゅ☆♪氏は、もうちょっと、なんていうか、乙女らしさとか、デリカシーとか…。
Mちゃんも、そこで納得せずに、Kちゃんの心配したら?
着替えもせずに出てっちゃったんだからさ。」
私「大丈夫じゃね?アイツしっかりしてるし。」
友人M「あんだけ大声出せれば、大丈夫でしょ。」
友人Y「そりゃ、そうだけど…。」
友人M「それよりさー、スリーパー・ホールドって難しいよな。
ウォーズマンの決め技じゃなかった!?」
私「あぁ、ウォーズマンだったと思うよ。
私はロビンマスクが好きだけど。」
友人M「あぁ、私はテリーマンが好きだな。」
私「いやいや、私はジェロニモが好きだな〜。
超人じゃないのに、超人を目指している所に泣けちゃったよ。」
友人M「アタシも〜。キン消しって集めた?」
私「や。私は集めてないよ。弟が集めてたけど。」
友人M「だよね〜。やっぱ、アレは男子が楽しむものだよね。」
友人Y「だから、もう、次は体育だからさ。
Kちゃんの事も、少しは心配もしようよ。
とにかく、移動するよ。」
ま、そんな事がありましたね〜。
すっかり忘れていましたけど。
コレ、ペテロ人格が女子高生の生活を楽しみに、もとい、私の周囲を浄化をしに来てくれていたみたいです。
こうして、記事にして気づいたのですけど。
別の人格が入り込んでいる間のやりとりは、その時の私の記憶から抜け落ちているようですね。
…そういえば、一度だけ。
高校生の時、丸一日、自分の記憶が無かったことがあって。
ノートを見ると、自分の筆跡できちんと書き込まれています。
友人達に聞いても、普段と変わらなかったよ?とくにおしゃべりはしていなかったけど、との答えでした。
その事があって。
私は自分の進路に医療系は省くことにしました。
記憶が抜け落ちているという事は、責任の重い(命のやりとりをする医療系は特に)仕事は任せられない。
とにかく、人数の多い職場にしよう、と決めたのでした。
高校生の時は、異常に眠気が襲い、どこでも寝てしまっていましたし。
(さすがに社会人になってからは、そういう事はありませんでしたが。)
自分でもうすうす人格が変わる事に気づいていましたから。
多重人格なのではないか、と疑い、就職してから通い始めた短大の通信教育で、心理学を専攻しましたが。
特に、異常は認められませんでした。