4歳年下の弟を出産する為に母親が家を空けていた、昭和52年10月6日の深夜。
私は、父親から性的イタズラを受け、それに抵抗した為、激しい暴行を加えられてしまいます。
ショックのあまり、心肺停止しましたが、父親に張り飛ばされ、からくも息を吹き返します。
そして、一人放り出されて泣いていた時、平成21年6月30日、ヘミシンクを始めて3ヶ月目の私が子供時代の自分をレトリーバルします。
(詳しくは自分レトリーバル現世編をどうぞ。→HP)
この話はその翌日の出来事です。
姉と兄は小学校に行っています。
父親は自宅で自営業を営んでおり、お店で仕事をしています。
当然、母親は出産間近の為、自宅にはいません。
怖くても、頼る相手は父親しかいません。
近寄ると、父親に好物のお菓子を渡されます。
父「夕べの事は誰にも言うな。
お前は捨て子だから、いう事を聞かないと、痛い目にあう事になる。」
と、口止めされます。
ひとり寂しく昼寝をすると、ミカエルがやってきて、お別れの挨拶に来たといいます。
今までは幼いから自分達と会うことができたが、もうこれからは会えなくなる。
君が生を全うしたら、迎えに来るといいつつ、彼は意味深な言葉を残します。
幼い私には彼の言わんとすることがよく分かりませんでしたが…。
(詳しくはこちらをどうぞ。→少女時代16)
ミ「…大事なのは、君を愛しているって事だよ。
私のお嫁さんになって欲しい、私のラ・ピュセル。」
私「いや。」
ミ「え…。」
ミカエルは抱きかかえた腕の力が抜けたのか、私をストンと足元に下ろしました。
彼は腕を組んだかと思うと、片手を額に乗せて、小さくため息をつき、頭を左右に小さく振ります。
そして、片膝をつき、私を見下ろしながら、端正な顔で私の両肩の上に自分の両手を置き、問いかけてきます。
ミ「今、何と?」
私「やだ。」
ミ「私との結婚がイヤなの?何故?」
私「だって、顔がいいから。」
ミ「んん?分かるように話して?」
ミカエルは急にニコニコしながら、私に問いかけてきます。
私「お母さんが言っていた。
結婚するなら、顔がいいだけの男はダメだって。」
ミ「うん?」
私「結婚するなら、お嫁さんを大事にする男の人がいいって。」
ミ「うん。」
私「それで、結婚してからエサをくれない男の人はダメだって。」
ミ「なるほど。」
私「だから、お嫁さんに優しい男の人が一番だって。」
ミ「うんうん。」
私「それで、優しくて、顔がよければこしたことないって。」
ミ「それじゃ、私で問題ないね。」
私「だから、しんじゅ☆♪ちゃん、らぁえるのお嫁さんがいい。」
ミ「えぇっ!!ちょ、何?」
私「だって、らぁえる、優しくて、かっこいいんだもん!」
ミ「何!あいつ、こんな子供に手を出して…!」
私「らぁえる、お顔キレイ…。」(←うっとり)
ミ「私だって、優しくて、顔がいいよ!
顔だけじゃない、体も頭もいいよ。
身分も立場も能力も財力もある。
そうそういないよ!これだけの男は!」
彼は私の肩を強く握り、揺さぶりをかけてきました。
私「イタタ!みかえる乱暴!みかえる、しんじゅ☆♪ちゃんはなして!」
ミ「あ、ごめん。」
私「もうっ!!みかえる乱暴だもん!らぁえる、そんな事しないよぅ!
みかえるのお嫁さんなんて、ぜったいダメ〜。」
ミ「えぇっ!ちょっと待って!」
ミカエルは私を強引に抱き上げ、私を説得にかかります。
私「や!抱っこイヤ。はなして、みかえる!」
ミ「いいかい!よく聞くんだ。
ほら、この顔をよく見てご覧。
らぁえるにも負けないほどかっこいいだろう?」
私「うん。」
ミ「そして、今はちょっと動揺しただけで、とても私は優しいんだ。
結婚したら、エサをやらない、なんてことはしないよ。」
私「えぇ〜?」
ミ「そうだ。私と結婚したら、豪邸に住まわせてあげる。
私の妻だから、女主人だ。
君にかしづく、大勢の者ができる。
家事もしなくていい。
綺麗な服もたくさんあげる。
君を飾り立てる豪華な宝石も山ほどあげるよ。」
私「ゴウテイって何?」
ミ「ほら、いつも私の家に遊びに来ていたじゃないか?
白亜の豪邸。お屋敷のことだよ。」
私「オヤシキ?お城ってこと?」
ミ「そうだ。お城に住む、お姫様にしてあげるよ。」
私「いい。いらない。」
ミ「えぇ!?なぜ?」
私「しんじゅ☆♪ちゃん、そーりだいじんの娘とおんなじ名前なの。
スエはしゃちょーか、だいじんか?なの。
だから、お城は自分で買う。
いっこくいちじょーのあるじのウツワだって、お父さんとお母さんが言ってたの。」
ミ「お城を買う…。
子供相手にどうやって、懐柔すればいいんだ…。」
私「お母さん、お金貯めてるの。
お母さん、しんじゅ☆♪ちゃん達を、ダイガクに行かせるんだって。
お母さん、しょーぎょーこうこうだったから。
子供達にはガクをつませたいんだって!」
ミ「…君の母親は君をしっかり育てているんだね。」
私「しんじゅ☆♪ちゃんはおりこうさんなの。
はたらがざるもの、くうべからずなの。
かってかぶとのおおしめろなの。
けいざいをせいするものは、21せいきをせいするなの。
いま、ゆーちょがあついって。
はんとしふくいで、ねんり8パンダなら、じゅうねんでガンガンのバイだって。
(注:今、郵貯が熱いって。
半年複利で年利8%なら、十年で元金の倍だって、と言ってるつもり)
しんじゅ☆♪ちゃん、おりこうでだいがく行って。
けいざいをせーして、お城買う。」
ミ「しっかり育て過ぎだっ!
女の子って、怖い!
たった、4〜5年で、こうもキャラクターが変わってしまうのか!?
ほら、思い出して、私との事を!」
ミカエルがまた私を揺さぶる。
私「イヤ〜。みかえるはなして!」
ミ「あ、ごめん、つい。
でも、ほら。
私もラファエルに負けず劣らずっていうか、私の方が美形だよ?」
私「えぇ〜?でもらぁえるのがいい。」
ミ「あいつ、あぁ見えても、独占欲が強いから。
君をお嫁さんにしたら、きっと、自分の家から一歩も出さないね。」
私「えぇ?」
ミ「ラファエルと結婚したら、きっと、もう私と会えなくなるよ?
その点、私と結婚したら、彼とは友人だから。
私の家とラファエルの家なら往復してもいいよ?」
私「う〜ん。」
ミ「そうだ!こうしよう。
私と結婚したら、君のお気に入りのドラゴンも付いてくるよ。
彼とはいつでも遊べる。その上、ラファエルの家にも行けるよ。
ラファエルと結婚したら、彼だけ。
ほら、私の方がお値打ちでしょう?」
私「う〜ん。」
ミ「ね!ね!私と結婚した方が、何かと便利だよ。
私と結婚しなさい。ね!」
私「分かった。べんりでおねうちなら、みかえると結婚する。」
ミ「…ちょっと、ひっかかるが、まぁいい。」
ミカエルは自分の腕の中から私を自分の足元に降ろす。
そしてどこからともなく、大きな布を取り出す。
赤と青と白色の三段の横じまの布。
フランス国旗、トリコロールが、青い地球を背景に真っ暗な空間で風を受けてはためいている。
私「それは?」
ミ「これは、君がかつて守った国の国旗だよ。
覚えていないだろうけどね。
私の、ラ・ピュセル…。
そして、これは婚約の証だ。
受け取ってほしい。」
そうして、子供の腕には抱えきれないほどの大輪のカサブランカをトリコロールでくるんで、私に手渡す。
私「みかえる、重いよぅ。」
ミ「うん?多すぎたか?
君はまだ、幼いからね…。
いいよ、下に置いて。
私の未来の花嫁さん。」
私はミカエルから貰った花束を下に落とす。
すると、彼は再び私を抱き上げる。
笑顔で私のおかっぱ髪をなでる。
ミ「よしよし、おりこうだ。
私の妻になったら、毎日いい暮らしをさせてあげる。
綺麗な服を着て、ご馳走を食べさせてあげるからね。」
私「…みかえる。なんか変。」
ミ「えぇ!変じゃないよ。
私は君が好きなだけだよ!」
私「しんじゅ☆♪ちゃんのことが好きなの?」
ミ「好きだよ。大好きだ。食べちゃいたいくらいにね!」
私「…お母さんが、子供の事を好きな大人はちゅういしなさいって言っていた…。」
ミ「え。」
私「みかえる、お父さんと、お母さんと友達?」
ミ「え?あぁ、友達だよ。君の事を見守っている、いわば友達だ。」
私「お母さんが大人の人でも、お母さんとお父さんのお友達なら、子供が好きでもいいって。
でも、お父さんとお母さんの前でお友達だといっていない大人はキケンだって。」
ミ「え?いや、大丈夫、友達だよ。」
私「はっ!!そういえば、みかえるとお母さんと、お父さんがいっしょのとこ、見たことない!」
ミ「それは無理な話だけど…。」
私「みかえる、キケン!しんじゅ☆♪ちゃん、逃げなきゃ!」
ミ「あ、こら。」
私はみかえるの顔を叩き、彼の腕が緩んだ隙に、地面に落下して駆け出す。
私「うわ〜ん!怖いよ〜!おかあさ〜ん!」
ミカエルがせっかく用意した花束を踏みつけて逃げ出す。
ミ「えぇ!今まで散々遊んだくせに!
家にも何度も来てるでしょ!?
なんで、こういうところだけ、子供らしいんだ!」
私「うわ〜ん、らぁえる、助けて〜!」
ミ「なんで、私から逃げて、ラファエルに助けを求めるんだ!
これだから子供って!
こら、逃げるな!
もう、時間が無いんだ!」
必死に駆け出す私を背後から追いまわして襟首を掴み、ミカエルは私を強引に抱き上げる。
彼の腕の中で私は両手両足を振り回して泣きわめく。
私「うわ〜ん、キケンな大人だ!
おかあさん、助けて〜!」
ミ「こら、暴れるな!イテ。
大人しくしなさい!
こうなったら、えい!」
キューン、ドン!(←ラブ・ズッキュン爆弾)
ミカエルは暴れる私の頬にキスをして、高濃度の愛のエネルギーを注入する。
すると、胸の奥に愛のエネルギーが充填され、一拍後には体中にあふれだし。
相手が愛おしくて、たまらなくなってしまうのだ!
私「ほわぁ〜。
みかえる、しゅてき〜!!
緑のお目目、キレイ〜。」
ミ「ふふふ。そうだろう、そうだろう。」
私「みかえる、しんじゅ☆♪ちゃん、チューしていい?
お嫁しゃんにしてっ!!」
ミ「ふふふ。どうぞ。」
ミカエルは頬を出し、私はたまらず、彼にキスをする。
完全に両目はハートマークになっている。
私「みかえる、お顔キレイ〜。
仮面ライダーより、かっこいい〜。
大好きっ!!」
ミ「この面食いさんめ!
ふふふ。そうだろう、そうだろう…。」
ミカエルが瞳を閉じて、私の記憶を探っているようだった。
ミ「バッタかっ!!」
パチ。
父「おい、しんじゅ☆♪、こんなところで寝てると、風邪ひくぞ?
寝るなら、2階で寝なさい。」
私「ん…。」
私は眠い目をこすり、体を起こす。
倉庫のコンクリートの上にダンボールを敷いて寝ていたのだった。
2階の和室の方が、日当たりが良くて暖かいのは分かっていたが、夕べひどい目にあわされた場所だ。
一人で眠るのが怖くて、寒くてもここで休んでいた。
父親に見つからないように、真っ暗にして。
私「あれ。今までいっしょにいたのに、どこ行ったの?」
父「寝惚けていないで、寝るなら2階にしろ。寒いだろ、さぁ。」
私「うん。」
私はダンボールを隅に引きずり、戻して、倉庫を後にした。
背後でミカエルの残念そうな気配を微かに感じながら。
それから、彼に再会したのは31年後の事である。
ヘミシンクを独学で初めて2ヶ月。
すっかり男性不信になっていた私は、初対面(だと思っていた)で抱きしめてきた彼の右手に思わず噛み付いてしまっていたのだった。