友人F「じゃあな、しんじゅ☆♪!何かいいもんあったら、また持ってきてやるよ。」
私「あぁ。気をつけて。男の財布の紐は緩ませても、大事なもんは許すんじゃねえぞ。
どうしてもって時は避妊しとけ。健闘をいのる。」
薄っぺらい学生かばんの中身に教科書はなく、鉄板をしこんでいるロングスカートの友人が教室を後にする。
私は読みかけの小説から視線を外し、片手を振って彼女と挨拶を交わす。
友人K「…お前、なんつー会話をしてんだ。
女子高生の会話じゃねーぞ。」
私「あぁ、なんでも金回りのいい男とデートだそうだ。」
友人M「で、なんでお前がおこぼれをあずかれる的な話になってんだ。」
私「んー、人徳?」
友人K「お前、ふざけてんじゃなくて。
そもそもなんであんなおっかないのと仲良くなってんの。」
私「何か知らんけど。私の親父の話をしたら、大ウケして。
『あんたには私、優しくなれる』って、時々けっこう美味いもんくれるんだよ。」
友人K「何を話してんだ。」
私「ん?さるぐつわの外し方とか。
骨折せずに2階から飛び降りる方法とか。
肋骨にヒビ入らなくてすむ殴られ方とか。
後ろ手に縛られた時の紐の外し方とか。
珍しい所では鍵の開け方とか。
食料がなくなった場合のカロリー摂取の方法とか。」
友人K「お前はどこの国の諜報員だ!」
私「ジェームス・ボンドってか!
私はドコにでもいる普通の女子高生だ。」
私は左手の中指で少しずり落ちかけていたメガネのフレームを下から押し上げて直す。
友人M「いや、おかしいだろ。普通の女子高生はそんな事しないし、知らない。」
私「じゃ、淑女のたしなみって事で。
私から言わせれば、彼女の方が、親御さんはドコの紛争地域の生まれですかって聞いたぐらいだ。」
友人K「なんだって?」
私「アイツ、スカートのウエスト部分にカミソリをしこんでいるらしいし。
カバンには鉄板を仕込んで、いざという時の攻撃に備えている。
しかもカバンの中には胡椒爆弾を持ち歩いているそうだぞ。
なぜ、平和な法治国家日本で、女子高生のお前が武装して歩いてんだって聞いたら。
まぁ、夜の集会の時にたまに男に襲われることがあるからだと笑いながら言っていたぞ。」
友人K「ちょっ、ちょっと待て。話に頭が付いていけない。」
私「そんな有職少年とつきあってると、ぐ犯で捕まった時、退学処分になるから、やめとけっていったらさ。
ちょっと、金回りのいい男から付き合って欲しいと言われたらしくて。
まぁ、清純異性交遊ならいいかな、と思って快く送り出したんだよ。」
友人M「おいおい。それでなんでお前が食い物にありつける話になるんだ。」
私「だからさ。チョコの空箱を筆箱に使ってるの見つけて。
それ以来、親切にしてもらってんだよ。
『アタシ、自分より悲惨な奴がいるとは思わなかった。
勇気が出てきたよ。』って、食いもんくれるんだ。
あーゆー奴らって、口は悪いけど、結構根は素直だぞ。」
友人M「それって、憐れまれてるぞ、完璧。
そんで、時々教室でたい焼きやらたこ焼き喰ってたのか。」
私「いや、宿題見せてるから、共存関係だ。」
友人M「いや、お前食い物を相手にたかってるぞ。」
私「相互扶助と言って欲しい。共存共栄だ。」
友人M「この小判鮫め。」
友人K「わかった、わかった!そんな事できんのお前位だよ。
で、ちょっと興味本位で悪いんだけど、どうやって後ろに縛れた紐を外すんだ。」
私「あぁ、靴のソールにカッターの刃を仕込んでおくんだ。
それで、縛られた時に靴を脱いで、手元に放り投げる。
そこから刃物を取り出して、ヒモを切るんだ。
けど、なかなか手元に靴が届かない事があってね。
手に取れても、刃物が沈み込んで取り出せない時もあるし。
しかもソールを突き破って貫通しちゃうと、足元がチクチクするし、雨の日はぐしょぐしょになる。
そこが難点だな。」
友人M「鍵の開け方は?」
私「あぁ、クリップにマジックで黒色に塗っておくんだ。
そんで、鍵穴から差し込んで、少しずついろんな方向に押す。
マジックがはげた方向にクリップを集中的に押しやっていくとシリンダーが動いて鍵が開くことがある。
これはかなり難しい。私は成功したのは1回くらいだな。」
友人M「そんな細かい作業できっこないぞ。」
私「ヒマな時にでも、生卵を直立不動させるといい。
できないと思い込んでいるから出来ないんだ。
塩をテーブルにまくのは無しな。
でも、私も鍵開けは一度しか成功した事が無い。
…間に合わなかった。(トイレが)」
友人M「何が。」
私「『おそろしくて言えない』…。(著:桑田乃梨子 出版:白泉社)」
友人M「お前、新名(漫画の主人公)を地でいってんもんな。
しょっちゅう霊的トラブルに巻き込まれてやがる。
何も無いところで転ぶし、事故には遭うし。
ちょっと歩けば変な男には絡まれるし。
こないだ、部屋にコウモリ飛び込んで来たって言ってたしな。
クスクス。おかしい。
女難って言うの?
お前、女だから、男難ってところか。」
友人K「おい、それぐらいにしとけ。
なんか、不憫になってきた。
アタシも今、アメでもあったら、こいつにやりたくなってきた。
いいじゃねぇか、他人に勇気を与えれられるなんてそうそうできないぞ。」
友人M「まぁなぁ。でもなんか美しくないな…。」
友人K「あ、そうそう。あのさ、明日CDの発売日なんだよ。
一緒に街に行かない?その後、スガキヤでラーメンでも食べにいこうぜ。」
私「せっかくのお誘い、残念だが、断る。」
友人M「何?食い意地のはったアンタが断るなんて珍しい。
何か用事あんの?」
私「明日は隣町のスーパーでお一人様、6個まで缶詰が一個99円だ。
最重要イベントと重なってしまっている。
学校帰りに寄って。帰宅してから行って。閉店間際にまた着替えていく予定だ。」
友人M「缶詰が最重要って…。」
私「うちのエンゲル係数を知らないからたいした事ないと感じるんだ。
缶詰は素晴らしい…。持ち運びも楽だし、一個あればご飯3杯はいける。」
友人I「お、今たまたま聞いちゃったけど。
しんじゅ☆♪ちゃん、意外と大食いなのね。
あたしもカツ丼ならどんぶり2杯いけちゃうよ。」
私「私は缶詰一個で丼いっぱいご飯が食べれる。」
友人M「普通じゃん。」
私「ラーメン丼にご飯茶碗3杯分の米を入れて食べてる。」
友人I「そりゃ、大食いだわ。」
友人M「お前、いつも早弁してるもんな。しょっちゅうパン食ってるし。」
私「菓子パンの一つや二つや三つや四つ。五つや六つや七つや八つ位、おやつだろ。
育ち盛りなんだし。」
(↑ここで言っている菓子パンとは、テーブルロールの事です。小さいパンですよっ。)
友人M「食べないから。いくら食べ盛りでも食べすぎだから、お前。
お前がお前ん家のエンゲル係数を逼迫しているから。
お前の胃袋は四つあるのか?それとも異次元に繋がっているのか?」
私「失礼な!小遣い月5,000円でやりくりするのは大変なんだぞ。」
友人K「お前、年齢、身長・体重言ってみろ。」
私「159cm、42キロ。ピチピチの16歳だ。」(←現在は縦にも横にも大きくなっています)
友人K「…神よ!!この不公平は一体なんなんですか!」
友人Kが両手を頭に当てて、空を振り仰ぎながら叫ぶ。
私「おおげさだなぁ。女の子はちょっとぽちゃぽちゃしてる位がかわいいと思うけど。
Kなんて、肌の色、白くてもち肌じゃん。私は色が黒くてギスギスしてるし。」
友人K「お前さ、私がお前ぐらいの外見だったらさ。
男に食いもんたかるよ。喜んでご飯奢ってくれるぞ。」
私「えぇ〜?なんか知らない男の人とご飯食べるのって、無理。」
友人M「そうそう。変な男なら、しょっちゅう後つけられてんじゃん。
たまには付き合ってやれよ。」
私「気持ち悪いよ。よりによって、いきなり体触ってくる変な奴らじゃん。
お断りだ。」
友人M「贅沢言うな。」
私「あんな気色悪い男共に群がられる私の身にもなれ!無理だ。
普通の健全な男性なら考える。男子高校生とか。
オッサンばっかだそ。」
友人K「あぁ、でも、お前、ルックスと内面にスゲーギャップあるから。
男子高校生は無理。年上でないと。」
友人M「あぁ、ヒデーギャップだよな。
私も、最初は真面目で大人しい女の子だと思っていたけど、こうもガサツとは。」
友人K「正直、私もそう思っていた。
私が男なら、詐欺だと訴えたくなるくらい、中身がオッサンやオバチャンなんだよな。
女の子じゃない。」
私「何を言う。見たまんま、真面目で大人しい、ごく普通の可憐な女子高生じゃないか。」
また、メガネのフレームがずれてきて、指で押し上げながら、真剣に答える。
友人K「お前、相当キャラ立ってんぞ。
年上っつっても、3つ4つじゃ無理。
10歳とか一回り上の、包容力のある男性じゃないと、お前みたいのは手なづけられない。」
私「何?キャラ?」
友人K「キャラが立つ。個性が強いって意味だ。
平凡とは程遠いって話。」
私「へぇー、キャラが立つっていう言葉があるんだ。覚えとこ。」
友人M「メガネキャラだな。おさげだし。
少年漫画だと、巨乳と相場が決まっているんだが。
貧相な胸で、期待を裏切ったな。」
私「貧乳言うな!そのうち育つ!」
友人M「クスクス。育つといいがな。
それだけ背が伸びていて、現在もそのサイズだと期待できそうも無いが。」
私「やかましぃ!世の中には小胸さんでもいいと言う男性が必ずいるハズだ!」
友人M「需要と供給のバランスだと、売れ残る可能性が大だな。
その前に性根を直したほうが賢明だと思うが。」
私「ころころ入れ替えられる心などあるか!!これが私だ!
そのうち素敵な男性に逢えるはずなんだから!」
友人M「あ〜、はいはい。言ってろ。」
友人K「あぁ〜、もったいない。資源の無駄だ。
アタシと体取り替えて欲しい。」
私「私と入れ替わりたいと言うのか?
そりゃ、おススメできないな。
もれなく親父が付いてくる。
それに食事は悲惨だからね。
痛んだ食材でもお腹を壊さない自信があるなら別だが。
いつ、食料が無くなるかわかったもんじゃねぇぞ。」
友人M「何、お前、腐ったもん食べてんの。」
私「学校で食べているパンはスーパーの見切り品だ。
買える時にまとめて買っちゃうから、賞味期限切れでも食べている。
多少カビ臭くても平気だ。
みんなには無理だろ。」
友人K「…お前、本当にあたしらと同い年か?」
私「何言ってんの!
ご飯はな〜、喰える時に、喰えるだけ、喰わないといけないんだぞ。」
友人I「あ、アタシ、用事思い出したから!」
友人M「ホラ、普通の女子高生はあーゆー反応だ。
そそくさと逃げ出しているぞ。」
私「何を言っている。戦いにおいて、最重要なのは、食料の確保だ。
勇気や信念など、むしろ邪魔なくらいだぞ。
へたな愛国心は身を滅ぼす結果となる。
一番大事なのは食料、その次に戦略と情報収集だ。」
友人K「何言ってんだ?お前。」
友人M「愛国心って言葉自体、普段聞かないな。
別にお前、日本に命ささげる気なんかないだろ。」
私「あるわけない。食料の重要性を言いたいんだ。」
友人M「お前、おとなしそうな外見で何ガツガツしてんの?」
私「っかやろう!お前ら2週間砂糖水で飢えをしのいだ事がないから、そんな悠長な事が言えるんだ。
いくら必要な摂取カロリーを押さえていたとしても、基本水だから。
部屋の電気つけずに、街頭の明かりで勉強していても、すきっ腹に響くんだよ。
そんな目に遭ってみろ!人生観変わる事請け合いだ!」
友人M「お前、今普通に生きてんじゃん。おおげさだな。」
私「あぁ、うん、ごめん。
結構近所の人からお菓子とか貰って食べ物はなんとかなってた。
夕飯に砂糖水と塩をなめていただけでさ。
死ぬ事はなかったよ。」
友人K「それが、Fに言っていたカロリーの摂取方法か!
お前んちは何?被災地なのか?」
私「あぁ、経済的な未曾有の大寒波が押し寄せている。
財布の中はツンドラ気候だ。」
友人M「シベリア寒気団が押し寄せてんじゃね?
お前ん家で居座って、大暴れしてるんだな。」
私「そうかもしんない。」
友人K「なんか、今、アタシ、戦後のドヤ街にいる錯覚に陥ったよ。」
友人M「あたしもー。今昭和の空気を感じた。」
友人K「今、平成だよな。たらこ唇の大臣が平成って文字の紙を持っていたよな。」
友人M「あぁ、確かに去年持っていた筈だ。
しっかりしろ、現代に戻って来い!」
私「昭和は過ぎ去ったぞ。しばらくしたら、21世紀だ。」
友人M「ねーねー、しんじゅ☆♪ん家でいすわっているロシア人の団体様。
両手を組んで、しゃがんで足だけ交互に押し出して踊ってんじゃね?」
私「あ、そーかも?
あれ、なんつった?なんとかダンス。」
友人M「踊ったら、思い出すんじゃね。」
私「そっかー。お、この体勢かなりきついぞ。はぁはぁ」
友人M「ホントだ。見た目面白いのに、かなり脚力がいるな。はぁはぁ。
思い出した!コサックダンスだ!」
私「そうそう、コサックダンスだよ。あ〜スッキリした!」
友人K「お前らいきなり教室でコサックダンス始めるな。
しんじゅ☆♪お前、悲惨な話しつつも、どうしてもコメディになるな。
これは一つの才能だと思うぞ。
明日、頑張って缶詰買ってこい。」
ま、そんな感じのごく普通の女子高生ライフを送っていたわけでございます。
(あくまでセルフイメージですが。)
で、現在。
相変わらず、ミカエルさんとの過去生の記憶が思い出せていないのですが。
仲良くやっています。
(一時期見たり、聞いたりできなくなってましたが、ちょくちょく知覚できるようになりました。)
ミカエルさんに、年いくつ?600歳以上?って聞いてみたところ。
ニヤリと笑って答えてくれませんでした。
え…、600歳以上なの、あなた…って感じです。
それでは、これ読んで、勇気をもらってね!
あ、そうそう、昨年やっと背が伸びるのが止まりました。
現在164cmです。
2mとかないですから!
胸は…。まぁ、記事読んでりゃ分かるよね。