気づくと、私はミカエルの書斎で立ちながら泣いていました。
顔を上げると、少し離れた場所に両腕を組んだミカエルが、顔面蒼白で私を見つめています。
私「ミカエルッ!」
私は、彼に合わせる顔が無い、と思うよりも先に、彼に飛びついてしまいました。
ミ「………。」
私「ミカエルッ!ごめんなさい。ごめんなさい、ミカエル。
こんな事になるなんて…。うっ。」
ミ「………。」
彼の胸に飛び込んだ私は、当然彼に抱きしめられると思い込んでいましたが、彼は黙っていただけでした。
私「ミカエル…?私を許してくれないの?」
ミ「…あちらで、休みなさい…。」
ミカエルはそっと私の両肩に手をおいて、書斎の奥の寝室へと顔を向けました。
私「ミカエル?私は…。
私はあなたに…。
…なぜ、私を見てくれないの?」
ミ「…いいから、奥で休みなさい…。」
いぶかしんで見上げる私をよそに、彼は私と視線を合わさないように、顔を背けて私を軽く突き飛ばしました。
私はさらに涙を流しながら、彼に必死で掴みかかりました。
私「ねぇ!ミカエル!何故私を見ないの!?
私は、私は…。
お願い、私を見て!私を許してっ!」
腕組みをして、顔を背けた彼に飛びつき、彼の体をゆすぶりました。
彼は、何かにじっと堪えていたようでしたが、その時の私は彼の気持ちを思いやるだけの余裕がありませんでした。
私「お願い、私を許して!
私を抱きしめてっ!」
ミ「……君は疲れている。
奥で体を休めなさい。」
ミカエルは瞳を閉じて、搾り出すようにそう言いましたが。
私「ねぇ!お願い、私の目を見て言って!
私を許すと言ってちょうだいっ!!」
ミ「…君はっ!!」
瞳を閉じていたミカエルがカッと目を見開いたかと思うと、私を無理やり抱き寄せて、口づけをし、そのまま私を書斎の奥へと乱暴に引っ張っていきました。
私「ミカエルッ!!
ねぇ!目を見て!お願い!」
ミ「君はっ!!私をどれだけ苦しめたらっ!!」
ミカエルは私を寝室のベッドの上に突き飛ばして、強引に服を脱がします。
私「いやっ!!やっとルシフェルから逃げた所なのに!」
ミ「私の前でその名前を言うなっ!」
私「いやっ!お願い、優しくして!」
ミ「君を大切に護って来たのに!
君を慈しんできたつもりなのに、なぜよりによって彼なんだ!!」
私「ミカエル、許して!愛してるの!」
ミ「彼に抱かれて、どうだったんだ!
私より感じたのか?
私より、良かったのか?
どういう風に抱かれたんだっ!!」
私「お願い!許してっ!
あなたにまで、乱暴にされたら、心が折れてしまう…。」
ミ「彼に抱かれて、君はどう応えたんだっ!
彼の方が良かったのか!?」
私「許して!ミカエル愛してるの!
あなたを愛してるの!お願い、許して!
優しくして!」
ミ「許さない!私より彼を感じたんだろう!
彼の痕跡を消す!
君は私だけのものだ!
ラファエルだって、ギリギリなんだ!
君が、彼を愛しているから…。
それを、よりによって、彼とは!!」
私「ミカエル、愛してる!愛してるわ!!」
そうして、彼は乱暴に私を何度も責めました。
私はうわ言のように、何度も許しを請いながら、彼に抱かれて。
嵐の様に彼に抱かれました。
少しして、彼がベッドから立ち上がり、ガウンを羽織ります。
私はうつ伏せでぐったりとしたまま、涙を流して、泣き続けていました。
彼は私の手をとり、手の甲にそっとキスをしました。
ミ「…すまない。
君が、辛い思いをして、私の元に帰ってきたというのに、乱暴をして…。
君を愛しているんだ…。
体も心も辛かったろうに…。
私を愛しているね?
そのまま、休んでいなさい。
私は重要な招集がかかっていて、今夜は戻れないだろう。
私を待たずに、先に休みなさい。
もしかしたら、数日間戻れないかもしれないが。
後のことは、ラファエルに任せてあるから、何かあったら、彼に相談しなさい。
戻ってきたら、二人で話し合おう。
…愛しているよ、私のラ・ピュセル…。」
私は涙を流しながら、彼の声を聞き、視線だけ彼の方へ向けて、小さく頷きました。
彼は微笑んで、私の黒髪をそっとなでて、寝室を出て行きました。
それが、彼をフォーカス100で見た、最後の姿でした。
