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夜明け前8

パン!

私「コンセントレーション!」

私はすぐさま何もない空間へと瞬間移動します。

そこは再び、4面を灰色の石で囲まれた回廊で、私はルシフェルさんの気配が漂ってくる方向へと歩きはじめます。

ごとん、ごぉる、ごぉる、ごぉる…。

また、重量のある物が床に落ちる音と、地響きと共に、何かがこちらに近づいてくる音がします。

私「またか…、懲りないな…って、おいっ!」

私がうんざりした気持ちで背後を振り返ると、凄まじい熱風がぶわっと、全身を撫でます。
私の背面には、さきほどより、かなり小ぶりではありますが、丸い巨石がこちらに向って転がりつつあり。
先ほどと異なる点は、オレンジ色に煌煌と輝き、それが溶岩である事だったのです。

回廊は勾配がついており、先ほどほど、スピードはありませんが、ドプドプっと音を立てて、マグマを蒔き散らかしながら、溶岩石は私へと近づいてきます。

パンッ!

私「コンセントレーション!サイコメトリー!
  って、えぇ!完全塞がれている!?」

急いで周囲の安全地帯を探知かけますが、どういう加減が見つかりません。
そこに迷い込んだ人間の探査能力にジャミングをかけている模様です。
私が進むはずだった前方も、突然袋小路になっています。

溶岩石が私の体へ到達するのは、目算で、残り後、10秒。

(通路に対して、溶岩石が比較的小さい。
 隙間をすり抜けるようにして飛ぶか?
 
 いや、この熱量では、火傷では済まなさそうだ。

 それとも、ローカル1へと退却するか?
 ここまで来て、逃げ帰るのか?
 
 私に撤退はありえない。
 
 炎には炎だ!)

私「サラ!冷気をぶつけろっ!」

サラ「無茶だ!」

私「構わん!最大出力だ!撃てっ!」
  リバル、リバル、リバル、リバルッ!」

至近距離に溶岩石が近づいてくる中、とっさに火の精霊:サラマンダーを召還(よ)び出します。
赤ともオレンジともつかない、鮮やかな髪の毛と、ファイアーオパールのような瞳を持つ、火の精霊、サラマンダーが私の呼びかけに対して、瞬時に溶岩石へと冷気を打ち込みます。
それと同時に私は手の平を前面にかざして、自分の体の周囲にリーボールを幾重にも張り巡らします。

どぐぉっ!どぷどぷっ。シュウシュウ…。

あたりに霧が立ち込めます。

熱気が急速に納まり、サラが引き続き、溶岩石に冷気を照射し続けています。

サラ「見事だ。
   なぜ、この方法を選んだ。」

私「火の属性の貴方なら、熱を操る事ができると踏んだんだ。
  それなら、炎だけでなく、冷気も操れるはずだとね。

  この大きさの溶岩はリバルだけで、踏みとどまるのは無理だと感じた。
  それなら小さく砕けばいい。
  温度差の熱膨張を利用した。」

熱した土鍋に水をぶっかけると割れる、という理屈だ。

サラ「なるほど。
   冷却自体が目的ではなかったというわけだな。
   サービスだ。
   細かくなった溶岩は冷やしておいてやったぞ。」

私「ありがとう。
  とっさの呼びかけに応じてくれた上に、そこまでしてくれて。
  感謝する。」

サラ「礼には及ばん。
   面白かったぞ。

   しかし、このまま行くのか?
   この調子ではまだ、トラップが続くぞ?」

私「…ルシフェルをぶっ飛ばすまでは、私は退かない。」

サラ「ずいぶんと物騒だな。
   しかし、よく他のガイドが許したな。
   危険だ。」

私「…彼らには言っていない。
  私の単独行動だ。」

サラ「ほう。」

私「ルシフェル、あいつのせいで、ダーリンとのHがままならないのよっ!
  新婚さんなのにっ!!」

サラ「何?」

私「ルシフェルのせいで、ダーリン達がEDになったら、どうしてくれんのよ!
  くぅ〜っ!人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて死んじまえって言うデショ!
  今から私が彼をぶっ飛ばしに行く!
  教育的指導よっ!」

サラ「…お前、そんな痴話ゲンカの為に、この私を召還(よ)んだのか?
   興味がそがれた…。
   ま、必要があれば、また召還(よ)べ。
   じゃあな。」

彼は優雅な半月型のアーチを描いた眉毛をひそめて、あきれています。

彼の瞳は右目しかよく見えません。
前髪が左目にかかっており、まるで、サイボーグ009の主人公のような髪型をしているせいです。
艶めいた瞳を持つ、オリエンタルな美貌の青年、サラマンダーが気配を消しました。

彼は初めて会った時、少年の姿をして、私をカッパードラゴンに乗せて、ウィンディーネの元へと連れて行ってくれましたが。
あれは、私の男性恐怖を見越して、姿を変えていただけのようです。

白い素肌にワンショルダーの赤い光を身に纏い、腰のあたりも赤とオレンジの光の揺らめきで裸身を隠しています。
ウィンディーネの青色のドレスも、水のような、光のようなエネルギーの揺らめきを体にまとって、服を着ているように私に知覚されていましたから。
どうやら、精霊は私にとっては、そのように知覚されるようですね。

私「ありがとっ!サラ!
  できる男は違うわね!愛してるわっ!チュッ!」

私は気配を消しつつある、彼に向って投げキッスをします。

サラ「やれやれ…。」

(しかし、サラってやっぱり大人だったのね。
 っていうか、ミカエルさんより年上に感じるなぁ。
 サラって何者?もしかして、スゴイ存在なのかしら?
 今まで、気にした事なかったけど…。
 ま、いいや、今はとにかく、ルシフェルよ!)

私「ルシフェル!いくら顔が良くても、性格悪いと女にもてないわよ!
  こんなに、ネチネチ攻撃してきてっ!
  アンタの考えそうな事なんて、お見通しよっ!
  待ってなさいっ!」



ダンジョン攻略は続きます。



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