(禊(みそぎ)のつもりか?)
心の内で自嘲しながら、バスルームを出ます。
髪からポタポタと雫が落ちるのも煩わしく感じながら、バスタオルで体を拭きます。
(ん?これは?)
慌てて、全裸で全身が映る鏡の前に飛び出します。
私「こんな事が!ここにも!」
私の左胸にあった黒い渦は影を潜めていましたが。
その代わり私の右肩から背中に向けてと、左わき腹、右足の太股、そして左手首に薄い黒色の渦がありました。
私「ルシフェルのオーラが、こんなにも混じっている!
ここにも!全部で四つ!」
(これは、四回交わったから、という事か?ハッ!)
私「なぜ肉眼でコレが見える!意識体ならまだしも!
それだけルシフェルの気が強いという事か!?」
私は鏡を掴みながら震えました。
(やはり、私の生体エネルギーを奪われた感じがする…。
しかし、チャクラの回転が整って、頭がスッキリしている。
これが彼と交わった効果なのか?
もしかして、私のオーラも彼に移っていて。
あちらにも何がしかの影響を与えている可能性もあるのか…?)
私はとりあえずパジャマを着込み、髪を乾かしながら考えます。
(とりあえず、頭がスッキリしている今のうちに物事を整理して考えよう。
多分、このままだと、またこの黒いオーラが消える頃にはまた彼を求めてしまうだろうから。
もう、そうしたら、理性が働かなくなる。
とにかく、今のうちだ。
おそらく、これは勘だが、ルシフェルは本当にミカエルの所在を知らない。
では、なぜミカエルは何の連絡も寄越さないで私の元から姿を消したか?だ。
まず一点。
私の知覚が落ちたからという場合。
もちろんそれも考えうるが、それでも相手は高次の存在だ。
テレビでも通行人の会話でも、何でも何がしかのメッセージを発信できるはず。
それすらも、ない。
私が気づかなかっただけ、という可能性がないわけではないが…。
それも薄そうだ。
第一、彼は分身を無数に作れるはず。
私に直接絡むことができなくても、メッセージの一言ぐらい寄越せないはずがない。
それこそ、少しの時間も避けれないほど忙しい、というのは考えにくい。
あるいは、一時も気が抜けない状況だという事も考えられるが…。
それでも、一分くらいはアクセスできそうなものだ。
これは、彼の身に何かが起きた、としか考えられない。
ラファエルもほぼ同時期にアクセスできなくなったのも心配だ。
彼ら二人同時にまったく連絡を寄越せなくなる状況とは、一体何だ?
私には想像もつかない事態に陥っている、という事か?
彼らが連絡を寄越すことができない、としても、なぜ、私から彼らにアクセスができない?
それも不明だ。
ルシフェルに監禁されたその当日には、はっきりとミカエルを知覚できた。
その直後から、ラファエルの知覚がぼやけて。
その後、彼ともアクセスできなくなって。
そして、自分からフォーカス100へ向おうとしたら、ホットラインが消えていた。
こちらからのアクセスを完全に遮断されてしまっている。
これは、ミカエル側からのアクセス拒否としか思えない。
なぜだ?私にあきれたからか?
でも、最後の会話で『帰ったら二人で話し合おう。』と言っていた。
これが別れの挨拶だとは到底思えない…。
そして、なぜ、私は無理にでも彼らを探し出しに行かないのだ?
以前の私なら、矢も盾もたまらず、彼らの胸に飛び込んで行っただろうに…。
そうだ…一番不自然なのは、私自身の行動だ。
いつもなら、『ブラックしんじゅ☆♪』になって、一気にフォーカスエリアをぶち抜いて彼らを捜し出しに行くはず…。
なぜ、気づかなかったんだ?ブラックに変身できていない自分に…。
そういえば、5月に入ってから、自分の体の芯が抜けているような…。
なにか、体の中からなにかが足りないような、フワフワした感覚があった。
もしかして、『ブラックしんじゅ☆♪』分の意識体が抜き取られているのか?
彼らに会えない寂しさからの虚脱感だとばかり思っていたが、やはり不自然すぎる。
私の意識体を私自身に気づかせないまま、抜き去り。
ミカエル達とのアクセスを遮断する存在。
何者かの介入があるのか?
それを許すミカエル…。
ありえない…。
あの、独占欲の強い彼が、ルシフェルの元に私が何度も行くのを容認するだなんて、ありえない。
彼の身に、何かが起きたんだ…。
もしかして、死んでしまったのか?
分からない…。
そんな事はありえないような気もするが、私自身彼を血祭りにあげたんだから…。
絶対にないとは言い切れない…。
そして、ラファエルもそれに関係しているはずだ。
大天使二人同時に足止めを食わせるだけの事態とは、一体なんなのだ?
私自身、まるで想定出来ない事態になっている、という事か?
一体、どうやってそれを確かめればいいんだ?
彼らは普段フォーカス60以上にいると言っていたが…。
それ以上の存在でなければ、詳細は分からないだろう…。
ミカエル以上の存在…。
『彼』か?
しかし、フォーカス100に、いや、今ではF21が精一杯の私ではアクセスがかなわない。
大天使クラス以上…。
そうだ、大天使メタトロンがいた!
しかし、彼の顔も姿も何も思い出せない…。
これでは、彼にアクセスする事も不可能だ…。
くそっ!手詰まりか…。
仕方ない、やはり地道に地上のへミシンカーからなんらかの情報を聞き出すしかないか…。)
そうして、私は再びPCを立ち上げて、貪るようにへミシンカー達の日記を読み漁ります。
この頃の私は、まだ楽観していました。
きっと、彼らからのアクセスがあるに違いないと…。
そうして、もう少しで5ヶ月がたとうとしています…。
彼らの所在は、まだ掴めていません…。
『夜明け前』、まだ続きます。
