「…しんじゅ…。」
唇に触れる柔らかくて、温かな感触。
微かに聞こえた声に、ふと、目を覚ましました。
瞳を開くと、いつもの光景。
白い天井と、白い壁が目に飛び込んできました。
(あれ…?そうか、さっきルシフェルさんのところから戻って来て…。
不安な気持ちになって、思わず、電気をつけたまま、寝ちゃっていたんだ…。)
ふわりと、唇に何かが触れます。
(?キス…。ミカエルさん…?)
涙の痕が残る、目の端を手の甲でぬぐうと、その手が弾かれます。
「…しんじゅ…。」
再び、唇に何かが押しあてられてきます。
(違うっ!!ミカエルさんはこんな感触じゃないっ!
ラファエルさんとも違うっ!)
私「うわっ!誰っ!?」
私がはっきりと目を覚まして、瞳を凝らすと、仰向けになった私の上に水蒸気のような白い空気の塊が浮かんでいました。
私「生霊っ!!リバルッ!」
すると、その空気の塊はフワリと少しだけ上方へと移動しました。
ショックで、心臓がドキドキします。
私「なぜ!生霊が私の部屋に?
えぇっ!
それに、リバルで弾き返せない!
どういう事?」
元々、私には多少の霊感があり、不思議なものが死霊か生霊かの区別はついていました。
そして私が精神世界のランキングに参加して、上位にあがってきた頃。
そのランキング上位者絡みの生霊がちょくちょく来ていた(あくまで私の知覚です。)事があったのですが、リバルを張れば何とかなっていた、という経緯がありました。
まぁ、その時はそばにラファエルさんがいましたし、全然怖くなかったですけどね。
(そうか!リバルは敵意のある存在を受け付けなくするものだからか!
この生霊は、敵意が無い。
それどころか、むしろ好意を持っている感じだから…。
一体、なぜ、生霊が私の部屋に入ってこれたの?
私の事をしんじゅ☆♪と呼ぶという事は、ブログの読者の様だけれど。
それでも、性的なエネルギーはラファエルがブロックしてくれているハズ。
一体、この事態はなんなの?)
私「誰っ!出て行って!」
「………。」
(声が聞こえない。
アレは一体、何者なの?
サイコメトリーだ!)
私が空気の塊に意識を集中させると。
彼の意識が私に流れ込んできました。
(しまったっ!
リバルを張ってても、好意なら筒抜けになる上に。
彼の意識がダイレクトに私に流れ込んでくる。)
空中に浮かぶ、何者かの生霊の思念は。
私に恋焦がれている、というものでした。
(こんな、こんな事!
サイコメトラーに、こんな弱点があっただなんて!
こんな、相手に好きになられたら、好きにならずにはいられない!
彼は、私のブログの読者で。
なぜか分からないけれど、私に激しく恋焦がれている。
うそ!どうしよう!相手が愛しくて、たまらない。)
私は動揺して、ついリバルを解除してしまい、そのまま生霊においかぶされてしまいました。
私「ウソ!ダメ!やめてっ!」
愛しさで胸がキューンとなって、うろたえている私を何者かが抱きしめてきます。
(…しんじゅ…僕を拒絶しないで…。)
私「リバルッ!」
再び白い空気がフワリと少しだけ上方へと移動しますが。
彼の意識と私の意識がつながったままで、私は涙を流してしまいます。
私「はぁはぁ。一体、あなたは何者なの?」
つい、彼の思念を読み取ろうとすると、また彼の意識が流れ込んできて。
愛しさで涙が流れてしまいます。
私「あ!ダメ!やめて。」
再びリバルが壊れて、何者かが覆いかぶさってきます。
私は必死に両手を押し上げて、相手を突っぱねようとしますが。
手首を万歳させられる格好になり、キスをされ。
愛しさで、頭がクラクラしているうちに、抱かれてしまいました。
私「いや!やめて!一体何が起こったの!?
あなたは何者なの?」
「…好きなんだ…。僕を受け入れて…。」
体が勝手に動いて、ベッドがきしみ続けます。
微かにサラサラの黒髪が見えます。
体にのしかかる体重はミカエルさんやラファエルさんに比べて軽く。
体つきも彼らに比べてずいぶん華奢なようでした。
私「ウソ、ウソ!
どうして、こんな事に!
ラファエル、助けて!」
ベッドがきしみ続けています。
(う…。気持ちいい…。
とろける…。
相手は生きた人間。
それも、へミシンカーだ。
私とどういう繋がりがあるの…。)
すると、私の脳裏に一枚の緑の葉っぱが浮かびます。
(つる性の植物の葉…。
相手の情報が読み取れない…。
相手はへミシンカーで、日本人男性。
この葉っぱが私と彼の関係の象徴なの…?)
私「…やめて…。あなたは誰なの…。怖い…。」
私の頬に温かい液体がポタポタと垂れてきているようでした。
相手が泣いているようです。
「…君が好きなんだ…。やっと、見つけた…。さみしかった…。」
私「う…。誰…。やめて…。」
(気持ち良すぎて、うまく思考がまとまらない。
体も押さえつけられて、逃げ出せない…。
ラファエルも助けてくれない…。
状況に頭が追い付いていかない…。)
涙を流しながら、相手に体を翻弄され、ベッドがきしみ続けています。
しばらくしたら、相手の気配が消えました。
私は乱れた髪の毛のまま、茫然として。
自分で自分を抱きしめて、震えていました。
私「一体、何が起こったの…?
私は見知らぬ誰かに抱かれたの?
もう、天使の加護は、消えた、という事?
あの、緑の葉のビジョン…。
ブドウとかの、つる性の植物の葉のようだけれど。
それで、連想するのは、私のブログの読者の人で。
一度、彼との共通の過去生のビジョンが浮かんだことがあったけど。
その時に、私は植物の棚の下で、彼とお話していた覚えがあって。
もしや、さっきのは、その人?
そんな事、確かめようもない…。
一体、私はどうしたらいいの…?)
私は混乱した頭を抱えたまま、翌日を迎えることになります。
そして、その日、自分のブログのコメント欄で私にとって、衝撃的な書き込みを見ることになるのでした。
