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最終話

(あの生霊は、やっぱり、あの人なのかな…。)

「しんじゅ…」

唇に触れるふわりとした感覚。

ベッドに横たわっていた私が目を開くと、空中に蒸気の塊のようなものが浮いていました。
とっさに、リバルを張ります。

「しんじゅ…好き…。」

私「あなたは、誰なの?名前を教えて。」

「僕は……。
 …僕の事を思い出して…。
 君を愛しているんだ。」

リバルを張っていても、相手の好意が伝わってきて、胸がキューンと苦しくなります。
しらず、リバルを解いてしまいます。

相手は私の顔の左右に、手をついているようで、ぎしりと小さな音を立てて、ベッドがへこみます。
そのままキスをされます。

私「ダメ、やめて。」

「…こんなこと、しちゃいけないけど…。
 君が好きなんだ。」

私「いったい、あなたは何者なの?」

「…僕を受け入れて…。」

両腕をつかまれて、万歳の格好になり、膝を割られます。

私「ダメ。お願い、きちんと説明して。怖い。」

「…僕のものだ…。」

背中が浮き、体が振動しています。
ベッドがきしんでいます。

私「怖い…。やめて。う。…気持ちいい…。」

「君はいつも……マの上に……の……タをふる…の勇姿…。
 皆、君が好きで…憧れ……勇気づけられ……。
 …はいつも、君の…で、見ていた……。」

(こんなこと、しちゃいけないのに…。
 気持ちいい…。拒めない…。
 愛されているという実感…。)

私の顔に、目に見えない、ポタポタとあたたかい液体が落ちてくる感覚と。
私自身、涙を流しながら相手を受け入れている事態に。
頭が混乱しながらも、相手が愛おしくなって、仕方がありませんでした。

10分ほどたつと、相手の気配が消えて。
私は一人、ベッドの上で自分を抱きしめて、呆然としていました。

(波動が、天使じゃない。
 かすかに黒髪が見えたけど、ユアンさんでもない。
 いつも同じ相手だ。
 なぜ、彼だけ、ラファエルのガードを潜り抜けられるの?
 もしや…。)

私は混乱した頭を抱えたまま、すがるような気持ちでパソコンを開きます。
すると、ブログの最古参のコメントの常連さんから、個人のメアドあてにメッセージが届いていました。
私はブログを始めた当初、あまり仕組みが分かっていなくて、初期に寄せてくれたコメントに対して、うっかり個人のメアドをつけてしまっていたのでした。

そのうちの一人からのメッセージでした。
内容は、セクハラ騒動でコメントを書き込んだ人物は、あなたに本気のようだから、彼にあなたのメアドを教えてもいいか?
そうして、メッセージのやり取りをして、人となりが分かったら、お付き合いを考えてみてもいいんじゃないでしょうか、というものでした。

(あ!これで個人的にやり取りができる。)

私は、連絡お願いしますと返事をして、直接彼とメッセージのやり取りをし始めました。

相手に私は

 『今は会えないけれど、私はミカエルとラファエルを愛していて。
  その上ルシフェルと関係しています。それでもいいですか?』と伝えました。

そうして、お互いの気持ちを確認しあって。
私たちはお付き合いをすることに決めました。

そうして、仕事が終わると、毎日ブログとミクシィをアップし続けます。

幾日か過ぎると、体が疼いてきます。

(く…。最近生霊騒ぎで、忘れていたけど。
 そろそろ、体が限界になってきた。
 でも、彼とお付き合いをすると決めたんだから。
 ルシフェルとは決別しなければ…。)


そうして、私は漆黒のロングヘアーに漆黒の六枚羽の堕天使の意識体で、アンダーグラウンドへと降り立ちます。
漆黒の夜空を滑空して、魔王が棲む宮殿の奥深くに、一瞬で瞬間移動し、ルシフェルのそばに出現します。

私「ルシフェル、話がある…あ。」

私が床に着地するやいなや、ルシフェルは私の腕をつかみ、ベッドに引きずり込んで、服を引き裂きました。

私「ルシフェル、乱暴はやめて!」

ル「許さない!この私を1週間も待たせて!
  お前を人間の男に渡すものか!」

私「やめて!あ…。」

ル「お前は私のモノだ!緑の姫君。」

そうして、彼に乱暴に抱かれてしまいますが。

体が離れて、シーツをつかんで、体をずらそうとすると、すぐさま覆いかぶさってきます。

私「お願い。もう、ここには来ない。私をあきらめて!」

ル「許さないと言ったハズだ!お前は私のモノ。
  どう扱おうと、私の自由だ!」

私「やめて、離して!落ち着いて、お願い。」

ル「私のモノだ、緑の姫君!」

そして、同じ事の繰り返し。
いったん、体が離れて逃げ出そうとすると、すぐさまつかまり彼に抱かれ続けます。

私「はぁはぁ。私は、モノじゃない。あなたの自由にはならない。」

ル「これだけ抱かれても、そう言えるのか?
  お前は珍しがられているだけだと分からないのか?」

私「そんなことない、私を好いてくれている。」

ル「天使ならともかく、悪魔と交わった女だぞ?
  呼び出されて笑い者にされるのがオチだ。」

私「信じている。彼はそんな人じゃない。」

ル「今更お前が人間の男に満足できるとでも?」

私「そんなことない!」

ル「愚かだ、緑の姫君。私の腕の中で狂っているくせに。
  お前を離すものか!」

彼に抱かれ、逃げ出してはつかまり、また抱かれ続けます。


私「はぁはぁ…、お願い、ルシフェル、もう、もうやめて。
  もう、十回以上している…。
  頭が、体が持たない。
  正気が保てない…。

  せめて、せめて、水を飲ませて…。」

ルシフェルは目を爛々と輝かせながらも、身を引き、私はすがりつくように、サイドテーブルへと向かい。
そこに置いてあった水を、のどを鳴らしながら飲み干します。

グラスをテーブルに置くや、いなや、腕をつかまれて、ベッドに引き戻されます。

私「ルシフェル、お願い、もうやめて。
  これ以上は無理…。」

ル「いいや、緑の姫君。お前は私のモノだ。」

私「私は、彼と…。」

ル「愚かだ、緑の姫君。
  なぜ会った事もない人間の事を信じられる?

  お前を救ってくれた人間は今までいなかっただろう?
  しょせん、お前は堕天使だ。
  私の側にいろ。」

私「それでも!私は一目、彼に会いたい。
  遊ばれてもいい!会って、気持ちを伝えたい。」

ル「お前を本気で愛する者などいやしない。
  実の父親でさえ、お前を人間として扱っていなかったではないか。」

私「彼とお父さんとでは違う!」

ル「だから愚かだと言うのだ、緑の姫君。
  人間は心変わりする。その男が父親と違うとなぜ断言できる?
  私の側にいろ。」

私「それでも、今の気持ちは真実だ!
  もし、彼が不実な人間なら、それを見抜けなかった私の責任だ!」

ル「だからお前は周りの者にいいように利用される。
  お前を病気に追いやった男は、周りにとがめられる事なくぬくぬくと退職金を手にしていたぞ。
    
  お前に犯罪を強要しておいてだ。
  それを拒んだお前を、あの男は毎日責め立てた。
  お前に非がないにも関わらずだ。
   
  そして、誰もお前を助けなかった。
  お前は組織に切り捨てられたのさ。
  その上お前は、生殖能力を失った。

  人間に必要とされていない、可哀そうなお前を私が引き取ってやる。
  お前は愚かだが美しい。
  私の側にいろ、アズラフィール(告死天使)。」

私「でも!病気になったおかげで、ヘミシンクを知って。
  ユアンさんと出会って、ミカエルと愛し合えた。

  後悔はしていない!彼に感謝したいくらいだ!

  それに、あの人もお母さんが認知症で苦しんでいたんだ。
  ひどいことをされてたけど、きっと悪い人じゃない。」

ル「お前はいつもそうだ。甘い。
  子供のころから、誰もお前を助けなかった。
  見て見ぬふりだ。
  なぜ、他人に善意があると思うのだ。」

私「信じている!本当に悪い人はいないと!」

ル「善意の塊のようなお前の母親はそれでどうした?
  早死にしたぞ?」

私「お母さんは、お父さんを許していた!
  子供の私には分からなかったけど、それでも夫婦だったんだ!」

ル「だから愚かだというのだ。
  お前を愛していると言っていたミカエルはどうした?
  ラファエルもどこに行った?
  お前は何も知らされていない。
  ただ、泣き暮らすだけ。
  私の側にいろ。」

私「分からないけど!きっと何か事情があったんだ!
  信じている!ミカエルもラファエルも私を愛していると!」

ル「あいつらが、お前を見捨てたとは考えないのか?
  そして、お前の知覚を私が奪っているとは?」

私「嘘だ!ルシフェルは優しい人だ!」

ル「なぜ、そう言い切れる。
  お前を監禁し、さんざん弄んだぞ。」

私「本当に悪い人なら、私を逃がしたりしない。
  本当に私が欲しいなら、意識体をこちらに監禁すればいい。

  ローカル1で、人間の生活ができる程度の意識体だけ戻せばいいだけだ。
  ハデスがペルセフォネにしたように。
  彼女が彼の愛を受け入れたからよかったようなものの、それが愛ゆえの行為であったとしても、彼女の自尊心はズタズタだ。
  そんなことをされたら、ローカル1での感情が死んでしまう。
  まともに人と関われない。

  それをあなたは私にしなかった!
  私に自由を与えている。」

ル「お前は愚かだといったはずだ。
  そこまでのことをする必要がなかっただけ。」

私「嘘だ!ルシフェルは淋しいだけなんだ!」

ル「…私の妻になれ!緑の姫君。」

私「ルシフェル、それは…。」

ルシフェルががむしゃらに私を抱きます。
私には、彼が泣いているように感じました。

ル「ハァハァ。愛している、緑の姫君。
  私の妻になれ…。」

私「ハァハァ。ルシフェル…。
  ルシフェル、本当は、貴方が好き。
  でも、妻になるのは、諦めて…。お願い…。」

ル「離さない…緑の姫君。人間になどにお前をやれない。
  今さら、お前が人間の男と幸せになれるとでも思っているのか?
  私の妻になるんだ…。」

私「………。
  分かった。
  ルシフェル、私はあなたの妻になります。
  あなたを愛している…。
  愛してるわ、ルシフェル。」

私は彼の孤独に胸を打たれ、彼の事も愛していて。
もう、人間の彼の事が好きでも、ミカエルやラファエルだけでなく、さらにルシフェルを愛そうと思いました。

そうして、私が泣きながら、ギュウッと彼の背中を強く抱きしめると。

その瞬間、私の胸からまばゆい薄緑色の光がほとばしります。

私「え…?」

その一瞬後、私の体がメタモルフォースして。

ゆるくウェーブした豪華な金髪に、金色とも、紫色ともつかぬ光の揺らめきを宿した瞳の。
白い古代ギリシャの女神風の衣装を身にまとった、背中に純白の6枚羽の天使の姿へとかわり。

私から身を起こしたルシフェルはいつの間にか、漆黒のローブを身にまとい。
白銀とも、銀髪ともつかぬ超ロングストレートの髪に、水色の瞳をしており。

背後から神々しい水色のオーラを輝かせて、穏やかに微笑んでいました。
その気配は深い尊厳を湛えて、兄とも父ともつかぬ親近感と、教師のような穏やかな威厳を感じさせ。

彼は端正な笑顔で、穏やかに私にこう言いました。


ル「おめでとう。第2ステージクリアだ。
  お前は、『愛に制限がない』ということを学んだ。」

彼の放つオーラに目を細めながら、私が震えて上体を起こすと、彼は手を引いてくれました。


私「…やっぱり、やっぱり演技だったのね!
  私に乱暴を働いたのも、ジャンヌの記憶が蘇った時に、私が正気を保てるように…。」

ル「…もう、お前の体はここにこなくても大丈夫だ。」

涙を流す私の頬にルシフェルは穏やかに微笑みながらそっと手をそえて撫でてくれます。

私達は立ち上がってお互いを見つめあいます。

私の体の周りには無数の金色の粒子が飛び交っていて、キラキラと輝いていました。


ル「お前は私の希望。 
  私の夢。
  さあ、はばたいて行け、愛する者の所に。」

ルシフェルは両手で私の体をつかんだと思うと、そのまま力強く空中に押し上げました。

私は背中の六枚の純白の翼を使って、そのまま空中にはばたきます。


私「ありがとう…。ルシフェルさん、ありがとう!」


私は胸がいっぱいになり、涙を流しながら、彼を振り返ると、ゆっくりと片手を振ってくれています。

私の体を取り巻く金色の粒子が暗闇にキラキラと光って見えて。

水色の光を放つ、彼の姿が徐々に小さくなるのを何度も何度も確かめながら、私はローカル1へと帰還しました。


これが、ルシフェルさんの姿をくっきりと見れた最後のシーンでした。



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