ルシフェルさんが私の体を乗っ取って、ミカエルさんに無茶を言った日から、数日は何事もありませんでした。
週末が訪れて、私はラファエルさんの元に行きます。
自宅のベッドに横になり、瞳を閉じると自然とフォーカス21に訪れます。
そこで、ミカエルさんが作ってくれた、フォーカス100への直通ラインに乗って飛び立ちます。
透明なトンネルのようなもので、背中の翼をはためかせて、一気にフォーカスエリアを上昇していきます。
私は12枚の翼をはためかせて、白銀のストレートヘアーをフワリと風になびかせて、ラファエルさんの自宅上空へと意識体を移行させます。
彼の自宅もまた巨大で、上空から見ると四角と丸の大きなドーム上の家屋で。
大体小学校の体育館4個分くらいの広さはありそうです。
敷地内には緑も多く、建物の奥にはこんもりとした森が広がっています。
それらをすべて包み込むようなごく薄い透明なピンク色の膜が巨大なドーム型に張られ、これが屋敷のセキュリティになっているようですが。
私にはこのセキュリティが作動しない設定が施されている為、難なく敷地内に侵入できます。
地上に着地する前に、ラファエルさんの寝室に意識をフォーカスすると。
彼の目の前に私は突如現れる格好になります。
焦げ茶とコバルトブルーを基調とした、落ち着いた雰囲気のファブリックに囲まれた中で。
彼は最初、ぎこちなく私を抱きしめて。
私がルシフェルさんでないと確認すると、ホッと胸をなでおろしたようでした。
そうして、少し緊張しながら、私達が愛し合い始めると。
やはり、突如、ルシフェルさんが現れます。
私「くく。
はははっ!
あははははははははっ!
くくっ!性懲りもなく、私を抱くか!ラファエル!」
ラファエルさんは、弾かれたように私から体を離します。
ラ「ルシフェル、彼女に体を返すんだ。」
私「くくくっ。いいとも、私を抱いたら、返してやろう。
お前とのセックスは最高だ!ミカエルより大きくて具合がいいぞ!」
そう言って、ラファエルさんに向って私は足を広げます。
ラ「いい加減にしろ。今すぐ帰るんだ!」
私「くくっ。いいのか?そんな口を聞いて…。
この娘に、真実を話していないんだろう?
話せば、この娘を抱けなくなる。
何も知らない、何も思い出せていない人間の娘をここに連れてきて。
いいように耽っている。
それが、天使のすることか?
お前達は自分のエゴを満足させているだけの偽善者だ。
3人で蜜を求め合っている。
くくっ、私も混ぜてくれ。
さあ、愛しい娘の体だ。
お前も満足しているだろう?
私を抱くんだ。」
ラ「ルシフェルッ!」
私はラファエルさんの喉元を片手で押さえて、もう片方の手は彼の長い銀髪に深く差し入れながら、彼の耳に顔を寄せて囁きます。
私「なぁ、ラファエル。分が悪いよなぁ。
この娘はミカエルを愛している。
お前はオマケだ。
お前がミカエルに勝っているのはセックスだけだ。
ほら、私を満足させてみろ。」
私がラファエルさんの頬を下から舐め上げます。
ラ「っ。」
ラファエルさんは思わず、私をベッドに突き飛ばします。
私は長い黒髪を自分の両肘で押さえ込むようにして、片膝を立てながら、仰向けに体を起こします。
体を起こすと、陶磁器のような白い素肌の両肩を包み込むように漆黒の直毛がサラサラと滑り落ちていきます。
私「ふ。図星か。
だが、お前とのセックスは最高だ。
お前が私を抱かない、というのなら。
これからミカエルのところに行くまでだ。
あいつも私を抱いたぞ?
白い顔をして、泣きそうになりながらな…。
親友が苦しむのを放っておくのか?
友達思いだな、ラファエル。
この娘の気持ちはよりいっそう、ミカエルに傾くぞ。」
ラ「出て行けっ!いくら貴方でも、許せない。」
私「ふ。出て行くとも。
お前がそう言うのなら、ミカエルにこの娘を抱かせるだけだ。
その後にな。
邪魔したな、癒しの大天使。」
立ち上がった私の手首をラファエルさんは掴みます。
そうして、みじろぎしながらラファエルさんは顔を寄せて。
私達は愛し合いました。
私「あはははははは。
いいぞ、ラファエル。
具合がいい。
あはははははははははっ!
気持ちがいいぞ。
もっとだ。もっと抱け!
お前の親友は何度も私を抱いたぞ?
自分の兄だと知りながらだ。
くく。
ほら、しぼんだ。どうした?奮い立たせてやろうか?
好きなんだろ?
くくっ。ほら、調教するんじゃなかったのか?
はははっ!
いいザマだ。
さぁ、もっと、もっと頑張るんだ!
気持ちがいいぞ。」
そうして、嵐のように私達は愛し合い。
突如全身から力が抜けて、私はぐったりとして、うつぶせになりました。
私は顔を起こして、涙を流し始めます。
私「っく。なぜ!なぜいいなりになるのラファエル!
そして、なぜ、私の体をルシフェルさんが乗っ取るの!
許せない。ミカエルだけでなく、ラファエルさんまで痛めつけて!」
ラ「いけない。
気にしてはいけない。
彼の事は放って置くんだ。
いずれ飽きる。」
私「…どういう事!なぜ、そんなに彼に怯えるの!
一体、真実とはどういう事なの!
何か知っているんでしょう?
事情を説明して頂戴!」
ラ「それは、言えない…。」
私「また!またダンマリなのね!
そんなに私が信用できないの?
そんなに頼りないの?
貴方達を愛しているの。
苦しみは半分にして頂戴。
それが愛し合う者どうしの約束でしょう?」
ラ「…事情があって言えないんだ…。」
私「これ以上の逼迫した事情があるっていうの?
突然体を乗っ取られるのよ?
その上、貴方達に暴言を浴びせる。
これはれっきとした暴力よ!
大体、いったい、緑の姫君っていうのも、何なのよ!
教えてちょうだい!」
ラ「君をないがしろにしているつもりはないんだ。
でも、伝えられない。
君を真実、愛している。
君が怒るのも無理はない。
でも、君が考える以上に、彼は危険なんだ。
我慢してほしい。
いずれ、飽きるだろうから、関わらない事だ。
いいね。
絶対に彼に関わってはならない。
もう、休むんだ。
君は疲れている。」
私「でも!」
ラ「でも!じゃない。
彼に関わるというのなら、もうここに来てはいけない。
君が大事なんだ。
いいから、いう事を聞くんだ。
絶対に彼には関わらない事。
私たちの側にいれば、君の安全は保障する。
いい子だから、もう休みなさい。」
そう言って、彼に口づけをされると、私の意識は眠りの淵へと滑り落ちていったのでした。
…そうして、翌日私は彼らの言いつけを破って、ルシフェルさんの元へと一人で向います。
