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夜明け前42

しんじゅ☆♪からのお願い。

今回の記事も、途中で過激な表現が出てきます。
この体験は5月下旬の出来事ですから、今の私は全然平気です。
体調の悪い方、繊細な方、性的な事に対する嫌悪感をお持ちの方、特に女性は読み飛ばしてください。
次回の記事の冒頭にざっくりとした説明を入れますので、この記事を読まなくても支障が無いようにします。
各自自己判断でお願いしますね。














薄暗い石造りの室内に、横長の四角い窓から、斜めに陽の光が差し込み、室内の埃がそれをうけて、金色にキラキラと輝いている。

石の壁は玄武岩の様で、表面のおうとつもそのままで、長方形にカットされて、壁面にはめ込まれているが、あちこち不恰好にせり出している。
木製の家具がわずかしかない、全体的に黒色や灰色が大部分を占める、帰って寝るだけが目的といった、武骨な印象の部屋だ。
その中に厚さ5cmほどの木綿のシーツをかぶせたマットレスのみ簡素なベッドが一つしつらえてある。

固くて薄いマットの上に、掛け布団はなく、私は生成りの木綿でできたと思われる、タンクトップにショーツのみの格好でそこに横たわっていた。

ガチャガチャ、ごそごそ。

レ「くそ。あせって、うまく脱げない…。」

横たわっている自分の足元の側の床の上で、レイモンが背中を向けて、服を脱いでいる。

腰に巻いていた戦闘用の装具やらを外すのに手間取っているようだった。

私は恥ずかしくて、視線をそらして胸の上で両手を組んで、もじもじしている。

彼にこの部屋に連れ込まれ、いったん私の服を脱がして、下着姿にしてベッドに横たわらせると。
彼は「ちょっと待って。」と言って自分の服を脱ぎにかかっていた。
その後、ボトムまで完全に脱ぐかどうか、しばし悩んでいたようだった。

午後の日差しを受けてキラキラと輝く金色の粒子は、レイモンが外して床に落とした装身具から舞い上がっていたようだった。

(ほこりっぽいな…。私も汗臭いかも…。
 体をきれいにぬぐえたらよかったんだけど…。でも…。)

そんなことを考えていたら、木綿と思しき白色の生地でできた、ふくらはぎまでの丈のぶかぶかの腰ばきのみを身に着けて、上半身裸のレイモンがこちらにやってきた。

彼は私の頭の両隣に両手をついて、私を見下ろす格好で声をかけてきた。

レ「…初めてなんだろ?
  俺、今まで商売女しか、相手にしたことなかったから。
  優しくできるか、自信ないけど、なるべく優しくするよ。」

私「………。」

私は頬に熱を持つのを感じながら、無言で頷く。

そのままレイモンは私の上に馬乗りでまたがり、タンクトップに手をかける。

私「…っ!待って!私、胸ちっちゃいから…。」

私は思わず、レイモンの手を握り、小声で震えながら伝える。

レ「…そんなこと。でも、ほら。
  足がきれいだ。
  特にふとももなんか、ふっくらしていて、女の子らしい。」

レイモンはにっこりと笑うと、私の足元に体を移動させて、白くて細い私の左足のふくらはぎから太ももの外側を右手の平でスリスリと撫でたかと思うと。

私の左ひざの裏に自分の左手をすべり込ませて、ひざを立てさせて。
彼は私の左のひざこぞうにキスをした。

私はびっくりして頭だけを起こすと、自分のひざ越しにレイモンのまぶたを閉じた顔がある。
そして、扇形に広がった金色のまつ毛がゆっくりと持ち上がり、その奥にあるアイスブルーの瞳がのぞく。
いたずらっぽい上目遣いの彼の視線と交わると、体の力が抜けて、自然と頬が緩んだ。

彼は瞳を輝かせて、四つん這いで私の体の外側を両手でペタペタと付きながら顔を近づけてくる。

頭の両隣に彼の両手があり、すこしだけウェーブした長い金髪を垂らしながら、私を見下ろす格好で声をかけてくる。

レ「夢みたいだ。こんなことになるなんて。
  …やっぱり、優しくできないかもしれない、ごめん。」

私「…っ!」

心臓が喉元に移動したかのように、胸全体が苦しくなる。
頬が熱を帯びて、頭に血が上る。

素肌がむき出しになっている私の肩に彼の長い金髪が降りてきて、シャラシャラと触れる。
微かに吐息が頬に触れるのを感じる。

思わず、顔をそむけると、そっと彼の片手が頬に添えられる。

(…もう、ダメ!)

彼の吐息がしっかりと頬に触れるのを感じる。

頭の中に自分の鼓動がこだまして聞こえ、夢中で瞳をギュッと閉じる。

まだ触れていない唇に彼の体温を感じる。


暗転。

















ジジッ…。


ロウソクの芯が焦げる音が微かに聞こえる、そこは牢獄。

鹿の角を連想させる、薄汚い茶色のロウソクはぶくぶくと気泡状の塊を抱えながらその身を溶かして縮んでいく。
強い獣臭を放ちながら黒い筋を垂らしている。
石造りの壁際にともされた暗いオレンジ色の明かりは、そのすぐ下にある、側溝の水たまりにいびつに映り込み、まるでゆがんだ黒い鏡のように見える。

女「嫌だよ〜!あたいは今日から月のモノが来たんだ!
  やるなら、あの女にしてくれ!」

赤毛で恰幅の良い女が、男に長い髪の毛を乱暴に捕まれ、必死で泣き叫びながら、私を指さす。

男「ちっ!しょうがねぇな。この女にするか。」

男は言い捨てると、私に近づき、腕を掴んで牢獄から引きずり出す。

そこここの檻の中から、女達の殺気立った視線を浴びながら、私は男に連れ出される。

嫌がる私を引きずるようにして、石造りの牢獄から上部が丸く弧を描いた木製の分厚い扉を開けて、食料を保管する倉庫の床に体を投げ出される。
倉庫内にはもう一人男がいて、私たちの騒ぎ声を聴きつけて、内側から扉を開けて招き入れる。

食料を入れたいたと思しき、大きな麻袋が散乱する石の床に投げ出された私は必死になって逃げ出そうとするが、待機していた男に足元をすくわれて、勢いよく転ぶ。
転倒したさきに、木製の椅子があり、ガタガタと大きな音を立てる。

男「なんだよ、またこの女かよ。もっとマシなのはいないのか?」

男「あぁ、もう一人のはちょっとな…。
  女ってのは面倒くせ〜んだよ。文句言うな。」

男「チェッ!あっちに行けばよかったな。
  コイツ、骨ばっていて、抱きごこちが悪いんだよ。」

遠くで微かに女の悲鳴が聞こえる。

サバト。

人間の皮を被った悪魔に、ここの虜囚達は毎夜嬲りものにされる。
生贄の羊があちらでも決まったみたいだった。

私は体を起こして、必死にドアへ向かって逃げ出そうとするが、そのまま、男達に床に押し付けられ、むりやり体をこじあけさせられる。

下腹部に激しい熱を感じる。
そして、キヤッと、氷をあてられたのような錯覚。
直後、鋭い痛みが走り、生暖かい粘液が内太ももを撫でる。

男「うわ、汚ね〜。」

男「げっ!膿が出てる。
  しばらくコイツはやめようぜ。」

私は麻袋の上で、苦痛に苛まれ、涙を流しながら体をくの字に曲げる。
男たちに乱暴に扱われた結果、皮膚が破け、出血する。
その傷が癒えない内に、同じ目に何度もあわされる。
局所にカサブタができ、それがはがされて、血液と膿が流れ出ていたのだった。

男「つかえね〜な。
  糞袋の役にもたちゃしねぇ。」

男「コイツ、神の声を聞いたんだとよ。
  聖女がこのざまだ。
  神の使いなら使いらしく、俺たちを昇天させてみろってんだ。」

男「糞袋以下じゃねぇか!この魔女が!
  ちっ!面倒かけさせやがって。」

男たちはゲラゲラと嘲笑したかと思うと私を足蹴にして、服を掴ませ。

私は再び、牢獄へと連れ戻されたのだった。

再び、別の女囚が捕らわれ、悲鳴を上げながら引きずり出されていく。
女たちの殺気立った視線が集まってはいたが、構ってはいられなかった。

暗闇の中、排泄物のすえた臭気が充満する中で膝を抱える格好で横たわり。
痛みをこらえながらも、これでしばらく生贄に出されずにすむと思うとほっとしていた。

頬を流れる涙を手の甲でぬぐうと、ざらざらする。
麻袋に書き込みされた塗料が顔についていたようだった。

(もう、ここは嫌だ。
 あぁ、青空を見たい。
 緑の匂いを含んだ風にあたりたい。
 体を暖かいお湯できれいにしたい。

 こんなに苦しいのに何もできない。

 こんなことなら、レイと一緒に逃げればよかった…。
 レイ、助けて。
 ここから連れ出して。
 お願い、助けて、レイ!)






「レイ!」

ハッと目を覚ます。
自分の声で目覚めた私の両目は涙で溢れていた。

「夢…?」

呆然と瞳を見開き、白い天井を見るともなく見続ける。
両目のふちから、涙が後から後から流れ出て、耳元に暖かい液体がポタポタと音を立てて降り注いでくる。

両腕を振り上げ、首を左右にふり、ここが自宅のベッドの上だと確認する。
現実感のない頭で、なんとか上半身を起こし、室内を見回す。
見慣れた光景。
ふとパソコンに目が留まる。

「さっき、Rさんのブログを読んだから…。
 慌ててパソコンを閉じて、いつの間にか寝ちゃったんだ…。」

つい、独り言をつぶやいてしまう。

(さっきのは夢?…いや、きっと私の過去生。
 Rさんのブログを読んで、記憶が呼び覚まされてしまったみたいだな…。
 喉が渇いた…。何か飲もう…。)

ふらつく頭を抱えて、冷蔵庫の扉を開けて、牛乳パックを手に取り、グラスに注ぎかける。
白い液体がグラスに数センチたまった時点で、気分が悪くなり、それを流しに捨てる。

今度はグレープフルーツジュースを取り出し、それを2杯飲む。
口の中に柑橘系のすがすがしい香りが残る。
ほろ苦くて冷たいジュースが混乱した心をほぐしてくれるようだった。

深呼吸した私は再びベッドの上のあおむけで倒れこむ。

(…ジャンヌの過去生の記憶か…。
 なんて生々しい…。)

瞳を閉じると、自然に涙が溢れてくる。
胸の奥を寂寥感と慕情が交互に押し寄せてくる。


私は暗闇の中、一人で膝を抱えて座り込み、涙を流していた。

(レイ!会いたい。
 レイ!助けて…。

 …ミカエルの声も聞こえない…。
 もう、生きていたくない…。

 まだ、ここで死ぬわけにはいかない…。
 ミカエルと約束したのだから…。)

 涙がポタポタと膝にかかる。

(レイがかわいいって言ってくれた足。
 もう、ぜい肉が削げ落ちちゃって、全然女の子らしくない…。
 
 こんな体、粉々にくだけてしまえばいい!

 私に優しくしてくれたのは、レイだけ。

 男達をレイだと思い込まないと、生きていけない。

 もう、いや。
 助けて、レイ!
 私をここから、連れ出して!お願い!)


涙にぬれた瞳を開ける。

(…今のは寝ていない…。
 過去生の記憶なんだな…。
 かわいそうに…。)

毎夜男たちに嬲りものにされる女囚達。
ジャンヌの体格は中性的で、男たちの食指にはひっかかりにくかったのだが。
無月経だった彼女はどうしても頻繁に相手をさせれらていたのだった。
強引に足を大きく開かされる結果、内太もものぜい肉がこそげていく…。

その上女囚同士での殺伐としたせめぎあいがある。
今夜、生贄に選ばれるのは自分かと、戦々恐々の思いで夜を迎えることになる。

何もかもが生き地獄だった…。
そんな事情が、なぜが理解できた。


(…ジャンヌの記憶と感情が、ダイレクトにぶつかってくる。

 キャラじゃないって…。
 ヘビーすぎる。
 勘弁してよ…。)

私は自分の腕を瞼の上に置いて、涙を流し続けていた。

(教師『歴史の真実を知りなさい。
 〜〜かつての英雄が、負ければ戦争犯罪人だ。』

 そう、言っていたのは、世界史の教師だったか?

 友人M『いくら真実を知れと言っても、ああも歴史の暗部をつまびらかさなくてもいいんじゃないか?』

 そう、プリプリ怒っていたのは、友人Mだったか…。
 思春期の女の子には刺激が強すぎると落ち込んでいたのはYちゃんだったっけ…。

 ははっ、まるで、思春期の女の子みたいに、動揺している。
 あれは、過去の事。

 …ミカエル、抱きしめて欲しい。
 心細くてたまらない。
 なぜ、今、彼はいないの?

これでは、あの時と一緒…。
 いや、全然事情が違う。

 私はこうして暖かいベッドの上にいて、ミカエルを恋しがっているだけ。

 私『私はあなた方、神々の盤上の駒になりますよ。
   ポーンからビショップに化けます。』
 
 そう、大見得を切って、彼に求婚したけれど。
 今の私は黒い髪に黒い翼の堕天使だ…。

 私『私の肉体と魂を差し上げます。
   明日死んでもかまわない。
   私と結婚してください。』

 彼は涙を流しながら、私を抱きしめて。

 ミ『もう、君は私の花嫁だよ…。』

 声を詰まらせながら、私にそう言っていた…。
 あれは2月19日の出来事で、あれからたった3か月だ。

 彼に会いたくてたまらない…。
 さみしい…。

 被災地で家族を津波にさらわれた人達も、こんな気持ちだったんだろうか…。
 自分の事で手いっぱいで、すっかり忘れていた。

 私は変わらず、日常生活をおくれている。
 はるかに恵まれているんだろう…。

 ジャンヌの記憶。
 どうして、こうも性的な部分にフォーカスされているんだ?
 私が男性に縁がなかったのは、実は現世の父親との葛藤だけが原因ではなくて。

 前世からのトラウマが影響していたってことなのだろうか…?
 自分で思う以上に根深い問題を抱えているのだろうか…。

 そもそも、ほんとに私の過去生はジャンヌ・ダルクなのか?
 何かの誇大妄想か…いや、無理がある。
 
 これだけ長編の物語を自分に思い込ませる為だけに創作したというのなら。
 逆に作家としての才能があるとしか思えないな…。

 それとも、たとえばユングの提唱する、集合的無意識にアクセスしたとか…。
 それじゃ、ミカエルさんが私の事を『ラ・ピュセル』と呼ぶ事とつじつまが合わない。

 やっぱり過去生なんだろうな…。
 すると、Rさんとも、過去生で関わりがあった人物、という事で。
 そして、ルシフェルを通じて、彼のヘミシンク能力を私が奪ってしまった、という事か。

 ル『かつてお前を愛した男の能力だ。遠慮なく受け取れ。それにこの男には新しい能力と役割が与えられる。』

 …いやに説明的で、疑問に感じたんだけど。
 問いただす前に、ラファエルさんが迎えに来て、わからずじまいだったっけ。

 …なんだか、ルシフェル、きちんとガイドっぽくないか?
 なら、なぜ、私に乱暴を働いたんだ?

 それに、あの時ラファエルさんは、助けに来てくれた。
 ルシフェルに監禁された時、いくらアンダーグラウンドが天使にとって禁域だとしても。
 ミカエルと二人、協力してなら、私を助け出す事もできたんじゃないのか?
 
 おかしい…。
 そもそも、彼らにきつく止められていたのにかかわらず、ルシフェルの元へと行った時の動機がきちんと思い出せない。

 そして、Rさんの能力をもらった時も、ラファエルさんにきつくとがめられたけれど。

 私『ごめんなさ〜い。こんな事になるとは思わなかったの。』

 気づくとローカル1で号泣していたけど、その内容がまるで思い出せない。

 ル『この娘の魂を触媒にして、私を召喚したか。』

 バレンタインデーのあの時、音声が消えて、映像のみのやり取りが見て取れていたけど。
 あの時3人の男達でなにがしかの密約がなされていたのではないのか?

 もしや、出来レース!?
 私がルシフェルに監禁・乱暴されるのも織り込み済みだったという事か!?

 分からない…。
 分からないことが多すぎる…。
 知恵熱が出そうだ。

 ミカエルの愛を疑うのは、私の存在意義を疑うのと一緒だ…。
 彼を愛している。)

ふぅ、とため息をつき、再び瞳を閉じる。


(レイ!助けて!お願い、ここから連れ出して!)


少女の悲痛な叫び声が脳裏にこだまする。

胸の奥を何かが締め付ける。

気づけば、涙を流し続けていた。

(Rさんに相談しようか…。
 いや、困惑させるだけだろう。
 何分、唐突過ぎる。
 
 寂しい。
 彼らの様に、私にも仲間が欲しい…。
 心細くてたまらない…。

 ミカエル、なぜ会いに来てくれないの…。
 私が堕天使になったから…?

 ル『ご自慢の緑の瞳も、今は闇色だ…。』

 まるで、闇の中にいるよう…。
 一歩先が崖なのか、それとも光溢れる世界へのドアの手前にいるのか、まるで分らない。

 先人達は『明けない夜はない』と言う。

 私も信じたい。

 今は夜明け前なのだと…。)



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