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夜明け前35

出勤途中の信号待ちで、長袖を着込んだ私は、左手首の袖をめくって、手首を確かめます。
やはり透明な黒い渦が手首を中心に渦巻いて見えます。
中心は濃い黒色そしてそこから放円心上にのびた先細りの筋が7〜8本、揺らめいて見えます。
まるで黒い蜘蛛のようです。

(おっかないな…怖くて直視できない。少し暑いが長袖にして正解だったな…。)

信号が変わり、自転車のペダルを漕ぎ、職場へと向います。
私は日常と変わらず、仕事に行き、残業をこなし、毎日ブログをアップし続けます。

ルシフェルから受けたこの刻印は、徐々に薄くなっていき、数日たつと見えなくなりました。

その頃の私はミクシィを始めつつも、なるべく毎日ブログをアップし続けていました。

ブログを書いている間は彼らの姿が思い出され、私自身癒されていましたし。
それに対するコメントを読んで、とても励まされたり、慰められていました。
そうして、泣いたり、笑ったりしながら、ブログの画面に向っていました。

また、ミクシィを始めた事で、よりPCに向う時間が増えていきました。
目的は自分と同様の体験をした人を探すこと。
できれば、相談にのってもらいたかったのですが…。

毎日のメッセージのやりとりだけで、消耗していきます。
新しくマイミクになった人の過去記事を少しずつ読み始めますが、ドンドン追いつかなくなり。
とても過去記事までは手が出せない状況になりました。

(これでは、私がマイミク申請した人からも、わざわざ私の過去記事を読みに行くことは期待できそうにない。
 相手から仲間を探し出してもらうのは無理だと思ったほうが良さそうだな…。)

そこで、ブログでもヘミシンクに関係する人の記事を探しては読み漁りますが、手ごたえがありません。
そもそもミクシィに加入したのも、濃い体験を読むのが目的でしたが、そういった人達は「突然のマイミク申請お断り」となっており、記事も読むのがはばかられたり。
突然のメッセージを送信するのもためらわれて、結局収穫はありませんでした。

寝不足になりながら、必死でPCに向う私でしたが、ドンドン追い詰められていきます。

(…ミカエルに会いたい。なぜ会えないの!ラファエル、抱きしめて欲しい。なぜ声が聞けないの!
 …もう、やだ!!どうして誰もいないの!)

私はPCを落として、ベッドに横になります。


…気づくとルシフェルの寝室に居ました。

私「うわぁ〜ん、わぁぁ〜。」

私はルシフェルのベッドサイドにしゃがみこんで泣いていました。

ル「…ふぅ。お前か。」

私「うわぁ〜ん。わぁあぁん。ミカエル〜!!」

ル「…こっちに来い。」

私「うぇ〜ん、ミカエル〜。ミカエル〜!」

ル「…ほら。」

そう言って、ルシフェルはしゃがみこんだ私を抱きかかえて、ベッドへと運び。
私にキスをしながら、服を脱がしにかかりました。

私「嫌!Hイヤッ!」

ル「こら。いてっ!」

私は本気でルシフェルの胸を叩きました。

私「なんでっ!!なんでHしようとするのっ!!
  イヤッ!もう嫌なの!」

ル「なんでって、こら。暴れるな。」

私「嫌なものは嫌なの!!
  何よ何よ!Hが上手けりゃなんでも許されるとでも思ってるのっ!!」

ル「イテ!一体何を言っている?」

私「何よ何よ!『私から離れられない体に作り変える』って、何時間もHしてっ!!」

ル「それは私じゃないだろう!?」

私「何よ何よ!イヤだって言ったのに、無理やりHしてっ!!
  やりすぎよッ!そんなんだから、Hなしでいられなくなったんじゃないっ!」

ル「だから、それは私では…。」

私「一緒よっ!!
  兄弟なんだから、連帯責任よっ!!
  何よ、ルシフェルなんて!!
  監禁よ!拉致よ!強姦よ!!殺人未遂よっ!!
  意識体じゃなけりゃ、死んでたわっ!!
  この犯罪者めっ!
  謝れっ!
  私に謝れこのヤロウ!!」

ル「分かった、分かったから!暴れるなって。
  こら。イテ。悪かった。悪かったって。」

私「何よ!その謝り方!!誠意が感じられないわっ!!
  慰謝料払いなさいよっ!利子つけてっ!!」

ル「とにかく、その手を振り回すのをやめろ。こら。イテ。」

私「ふぇ〜ん。ミカエルに置いてけぼりにされたぁ〜。グスングスン。」

ル「とにかく、落ち着け。何か飲むか?」

私「嫌よ!変なもの飲ませて、こっちで暮らさなきゃならなくなったらどうしてくれんの!?
  この犯罪者め!!」

ル「悪かったから…。
  ほら、落ち着け。何もしないから…。」

私「信用できないわっ!この悪魔っ!
  なによなによ!偉そうにふんぞりかえっちゃって!!
  魔王なら魔王らしく、魔法でも使いなさいよっ!!
  ほらっ!今すぐここにミカエルを呼んでっ!!」

ル「…お前は一体、私をなんだと思っているのだ!?」

私「ミカエルのお兄さんっ!!」

ル「っ!…ふーっ…。」

私「うわぁ〜ん、役立たず〜!!」

ル「…お前、この私をよくもそこまで…。」

私「何よ!なんか文句あるの!
  ミカエルかラファエルでも呼び出してから文句の一つでも言いなさいよっ!」

ル「こら。暴れるな!ほら、分かったから。悪かったから。
  何もしない、何もしないから大人しく抱かれろ。」

そう言って、ルシフェルは強引に私を抱きしめましたが。

私「適当言うなー!!」

ガブーッ。

私は彼の肩に噛み付いてしまいました。

ル「イテッ!うわ、何するんだ!」

彼は私の脇の下を両手で掴んで突き放します。
私は彼の腕に体を支えられ、肩から下の体をブラブラさせながら、歯をカチカチと鳴らします。

私「何がイテッ!よっ!
  それはこっちのセリフよっ!
  ちょっと歯型がついただけじゃないのっ!
  あなたなんて、私の肩の肉、喰いちぎったじゃないのっ!!

  謝れっ!!
  私に乱暴した事を!!
  あんな抱き方した事を!
  どうやったら、あんな乱暴ができるのよっ!!

  今まで関係した女性に対して、謝れっ!!
 
  何よ何よ!アンタ達、女の気持ちなんて全然考えていないじゃないっ!
  貞操を奪ったら、自分の物っていう発想自体が古いのよ!」

ル「何…コレ…。」

相変わらず私は彼の両腕に支えられて、肩に首が埋まる格好で涙をポロポロこぼしながら彼に怒鳴り続けます。

私「そうよ!アンタ達、一体何歳なのよ!
  子供の頃会った時から、容姿が全然変わってないじゃないっ!
  なぜ、見た目年齢20代なのよっ!ムカつく。
  私より年下なのが許せないわっ!
  どうせ、600歳とか800歳とか下手したら1000歳なんでしょう?
  ほら、正直に言って御覧なさいよ!
  じゃないと帰るわよ!?」

ル「…それ以上だ…。」

私「キーッ!ムカツクーッ!!
  女より綺麗な顔して、嫌味なのよ、あなた達!!」

ル「それは私のせいじゃないだろう!?お前だって同じ顔だろうが!」

私「やかましぃ!私は日本人だっ!自分の顔は見れないんだから、知った事かっ!!」

ル「…もう、お前、黙れ。」

私「ムグング。」

ル「こら、噛むな!大人しくしろ。」

私「ングング。」

私はルシフェルに片手で口を塞がれて抱き寄せられ。
そのまま横になり、片手で背中をポンポンと叩かれました。
私はしばらくジタバタと暴れていましたが、彼ががっしりと抱きしめてきたので。

次第に大人しくなり、彼の腕の中に居ました。
すると、ルシフェルは私の頭や背中を優しくなでてきて。
彼の胸に頭を預け続けて、彼の鼓動を聞いていると、すっかり落ち着いてきました。

そうしたら、彼の白銀の長い髪が気になり。
そっと手を伸ばして指を絡めて遊び始めました。

(ラファエルの髪みたいに、綺麗な髪だな〜。
 指に絡めても、すぐにほどけてしまう…。
 ラファエルが嫌がるのを無理に三ツ編みにした事あるけど。
 髪がしっかりしていて、すぐにほどけちゃったんだよな〜。)

そんな事を考えていると、ルシフェルがそっと体を起こして、私の顔を覗き込みます。
私は彼の顔をじっと見つめます。

(ミカエルと瓜二つだけど。
 やっぱり、雰囲気とかが全然ちがうな〜。
 声も低くて、硬質な感じだし。
 ミカエルの方が、ずっと表情がある…。
 一番の違いはやっぱりこの瞳か。
 マスカットグリーンの瞳、綺麗な緑色…。)

彼の白銀の髪に指を絡めつつ、彼の瞳をじっと見つめていると。
ルシフェルが唇を寄せてきました。

バチーン!

私は彼の頬に平手打ちを喰らわせて、立ち上がります。

私「何よっ!何もしないって言ったのに、今Hな事しようとしたでショ!」

ル「今のはお前が誘ってきたとしか…。」

私「やっぱり信用できない!
  帰るっ!
  絶交よっ!」

ル「私の方が被害者だ。」

私「ルシフェルなんて、大嫌いっ!
  もう、来てあげないんだからっ!」

ル「なぜ泣く!?泣きたいのはこちらの方だ。
  手を出していないんだぞ?」

私「ばかぁ!!デリカシーがないのよっ!!サイテー!!」

ル「あ、コラ!?」

私は背中に6枚の漆黒の翼を出現させ、一気に瞬間移動して、そしてローカル1へと飛び去ります。

私「うわーん、ミカエルのばかぁ、ラファエルのばかぁ、ルシフェルのばかぁ!」

そんな風に泣きながらローカル1へと戻ったのでした。



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